医療新時代を開くNAD+ NMN(ナイアシン:ビタミンB³)

医療新時代を開くNAD+合成系NAMPTの研究その1:
今井真一郎博士らのNAD+合成系NAMPT研究
ナイアシンがサーチュインとコラボしてミトコンドリアを活性化する

2024/11/13
最終更新:2026-09-08

                                                     
 1. アンチエージングに関わるNAD+(ナッドプラス)はナイアシン(Niacin:NAM)が前駆体NAD+とは生体が摂取した食事の栄養分をエネルギーに転換する機能を持つ補酵素の略語。
ニコチンアミド*・アデニン・2ヌクレオチド(Nicotinamide adenine dinucleotide )を指しますが、ほとんどの生物細胞に存在する分子。
1906年ごろの古くに発見され、脂質代謝に関わる重要物質として知られていました。
NAD+(プラス)はナイアシン(Niacin)と総称されるニコチンアミド(nicotinamide:NAM)を前駆体として体内生成されます。
哺乳類はビタミンB³の*ニコチンアミドを材料として、2段階の酵素反応を経てNAD+(プラス)を生成する経路(biosynthetic pathway)を持っています。

近年に新たなNAD+(ナッドプラス)の機能メカニズム(作用機序)が解明され、NAD+中間代謝物のNMN:ニコチンアミドモノヌクレオチドやNR:ニコチンアミドリボシドを含めて長寿やがん(癌)の抑制に関わることが解り、創薬の可能性を期待した製薬会社関連の研究者が急増しています(第3項以降)。2. ニコチンアミドとニコチン酸はナイアシン(ビタミンB³)のことです高齢者が急増している長寿社会でニコチンアミドとニコチン酸という言葉が目につくようになりましたが、大豆など豆類に多いニコチン酸(Nicotinic acid)と肉や魚に含まれるニコチンアミド(nicotinamide:NAM)はいずれも水溶性ビタミンのナイアシン (Niacin)またはビタミンB³と総称されています。
ニコチンという呼称は誤解が多いためにナイアシンと総称するか、ビタミンB³が一般的となっています。
ナイアシンは食品から小腸に取り込まれる経路以外に、アミノ酸のトリプトファンから肝臓で体内生成される経路があり、普通の食生活ならば不足することはほとんどありません。3. NAD+(ナッドプラス)は栄養分をエネルギーに転換するばかりでないNAD+(ナッドプラス)は先に述べたように20世紀の初頭には確認されていましたが、エネルギー転換が主要な役割で、使い切られていると考えられていました。
それが近年になり、NAD+には、その後に重要な役割があることが分子レベルで解ってきました。
NAD+が長寿関連の*テロメアー(後述)の長短にも関わる重要作動物質であることが次々と報告されたのです。
すでにNAD+を機能させる17種類のタンパク質群(*PARPs)が発見されており、それらはDNA損傷の修復など、細胞のストレス応答に機能していることが解っています。
*PARPs:poly (ADP-ribose) polymerase. 適量ならばDNA修復反応を活性化する酵素.4. ワシントン大学今井真一郎博士らによる老化関連疾患に関わるNAD+合成系研究この「NAD+(ナッドプラス)合成系」を応用した新規抗加齢療法の可能性を研究しているのが慶應義塾大学医学部卒業後、ワシントン大学医学部内科で研究を続ける今井真一郎博士、山口 慎太郎博士。
レスベが活性化する長寿酵素サーチュインが癌遺伝子発現と脳血管障害を制御新薬開発の主流は「医食同源」への回帰」
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=835
 NAD+(ナッドプラス)合成系や、その主要*メディエーターとして知られる*サーチュイン(sirtuins)を標的とした新しいテーマ(新規抗加齢療法)を米国の基礎研究成果を基盤にしてリサーチしています。
*メディエーター(Chemical mediator:細胞間のシグナル伝達を行う物質)

NAD+合成系の老化関連疾患における病態生理学的意義を探るテーマは*MITのガレンテ博士(Leonard Guarente)らによる研究が進んでおりガレンテ博士らは「*NMN,*NRに代表されるNAD+中間代謝産物は、NAD+合成系の促進,サーチュイン*の活性化を介して各臓器に作用し,老化関連疾患の病態を改善すると期待される」と延べています。

今井真一郎博士らの実験では、NAD+(ナッドプラス)を機能させるタンパク質群*PARP-1を投与したマウスの筋肉と褐色脂肪組織においてNAD+(ナッドプラス)量が増加し,SIRT1*の触媒する反応の促進が認められ,普通のマウス(野生型)に比して,ミトコンドリア機能,エネルギー消費が促進され,耐糖能も改善し,体脂肪量も低下しました。
*PARPs:poly (ADP-ribose) polymerase. 適量ならばDNA修復反応を活性化する酵素.

またインスリン抵抗性,糖尿病,がんおよびアルツハイマー病に代表される老化関連疾患においてNAMPT*の酵素反応産物であるニコチンアミドモノヌクレオチド( NMN)や,ニコチンアミドリボシド(NR)などの「NAD+中間代謝産物」がNAD+量を増加させ,病態を改善することも報告されています。(今井真一郎博士ら)。5. NAD+(ナッドプラス)、サーチュイン、PARPsのコラボレーションここで登場するのが*テロメアーの長短に関わることがすでに知られているサーチュインです。
サーチュイン(sirtuins)は上記のNAD+と深い関連性を持つ、NAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素(NAD+-dependent deacetylases)のことです。
すでに7種類が発見されていますが、いくつかの種類のサーチュインはNAD+を機能させている主要なタンパク質であり、SIRT2(サーチュイン2)は長寿や代謝の酵素として生体恒常性(homeostasis)の維持、カロリー制限、血中脂質の減少、解糖、炎症の防止など様々な機能が知られています。
またSIRT6(サーチュイン6)は癌(がん)の制御に重要な関与をしている癌抑制因子ともいえます。

サーチュイン研究の第一人者、*MITのガレンテ博士(Leonard Guarente)らにより、サーチュインがNAD+やその前駆体に主要な働きをしていることが分子レベルで解明され、これを切り口とした長寿、がんの予防や治療の研究が一気に進展してきました。
ガレンテ博士は1978年にハーバード大学を卒業。
NAD+ (ナッドプラス)やその前駆体( precursors)をテーマに、エイジングに関わるサーチュイン(sirtuin biology)の分子細胞遺伝子学研究を続けています。
*Leonard Guarente:Director of the Glenn Laboratory for the Science of Aging at MIT, Novartis         Professor of Biology*MIT:マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)

*最大のサーチュイン活性化物質(スタック)は天然のブドウレスベラトロールです。
「 サーチュイン活性化物質スタック(STAC s)の発見」
   https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=608
 博士は下記のように述べています。
「驚いたことにサーチュイン研究は生化学の広い範囲に関連したことを研究していることとなり、全てに一つかそれ以上のサーチュインが関与しているのです。
サーチュインが体に必要な燃料量から(計算して)食べるべき食物の分量(カロリー)を決めているともいえます。
多すぎれば(余剰分は)エネルギー産出をせず、食物が適正量ならば、サーチュインはほとんどのエネルギー産出に関与します」

NAD+:ニコチンアミド・アデニン・2ヌクレオチド(Nicotinamide adenine dinucleotide )
NMN:ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide)
NR:ニコチンアミドリボシド(nicotinamide riboside)
NAM:ニコチンアミド(nicotinamide):ナイアシン(Niacin):ビタミンB³:ニコチン酸(Nicotinic acid)
NAMPT:
ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(nicotinamide phosphoribosyltransferase)
NAD+量を調節し,サーチュインに代表されるNAD+消費酵素を介して代謝,炎症,分化,老化などの生物学的な多彩な局面において重要な役割を果たす。
*PARPs:poly (ADP-ribose) polymerase. 適量ならばDNA修復反応を活性化する酵素.
6. NAD+(ナッドプラス) とその代謝、信号伝達に関するカンファレンス2017年7月第2週にルイジアナ州ニューオーリンズのマリオットホテルに世界中から150人の研究者が集まってカンファレンスが開催されましたがテーマは「NAD+ Metabolism and Signaling:NAD+の代謝と情報伝達」
主催者の一人がMITのガレンテ博士(Leonard Guarente)です。
NAD+、サーチュイン、PARPsのコラボレーションが鮮明になってからのテロメラーゼとサーチュイン研究は、爆発的ともいえる盛り上がりで、驚くばかりの多くの研究者が参入しています。
研究者による論文は最近2年間で15,000件を優に超えているといわれます。

2000年代になりテロメアの仕組みや、テロメラーゼの活性化が話題となった時期はテロメアの研究や、それに関係する研究の大部分がガレンテ博士、シンクレアー博士などアメリカ東部のハーバード大学とMIT大学が中心となってマスコミを賑わし、世界的な関心を呼んでいました。
「ノーベル医学生理学賞(2009年)を受賞したテロメラーゼの発見
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=156
 ところがグループにはサプリメント販売や特許の譲渡など金銭的な関心が強いメンバーが多く、ベンチャー企業を幾つも立ち上げたために、拝金主義を嫌う保守的な東部人に反感を買い、研究を否定する勢力の総攻撃を浴びる時期が続いていました。
「食べても太らない.3割は長生きできる長寿の仕組みを発見した」というセンセーショナルなプレゼンテーションも悪評でした。7. (参照)テロメア:telomere人間の寿命がテロメア(telomere)の長さに関係するという研究が確立されたのは1980年代。
古い話ではありません。
テロメアは真核生物の染色体端部にひも状に付属します。
その役割は細胞分裂時の染色体遺伝子転写を損傷から護ることと言われています。
テロメア自身も遺伝子転写の度に損傷して短くなり、6-70回くらいで消滅。
これは細胞死を意味します。
1971年にテロメアの機能を確認していたロシアのオロフニコフ博士(Alexey Matveyevich Olovnikov) はテロメアの活性に影響する酵素(テロメラーゼ:telomerase)の存在を予言していました。
テロメア紐の保護膜を破壊し、それを短くする酵素に対して、当然のことながらそれを防ぐ酵素(ヒストン脱アセチル化酵素)の存在があるという仮説です。

その後、ノーベル賞受賞者らによるテロメラーゼ発見により、博士の仮説は証明されました。
人類の生死を左右しているだろうテロメア(telomere)とテロメラーゼ(telomerase)の機能解明は、長寿の達成と病から解放、特に癌完治の可能性を示唆します。8. (参照)テロメラーゼを活性化させる酵素のサーチュインテロメラーゼを活性化させる酵素はハーバード大学のシンクレアー博士とバイオモル社のホーウィッツ博士により発見、命名されました。
彼らは細胞内で活性化すると、その寿命を延ばすことが出来る酵素を同定し、その酵素をサーチュイン(sirtuins)と名付けました。
名前の由来はsilent mating type information regulation のことだそうです。
サーチュインにはいくつかのタイプがありますが(2018年現在サーチュイン・ファミリー、7種類が報告されています)、その一つのSir2は飢餓させると(カロリー補給が無い)活性化することが知られていますサーチュインのSir2はほとんどの生物細胞に含まれるNAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素(*NAD+-dependent deacetylases)。
(*NAD:ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド:nicotinamide adenine dinucleotide)
博士らは、Sir2を活性化させる*成分(スタック)が、赤ワイン・ポリフェノールの天然ブドウレスベラトロールに豊富に存在ことを確認しています。
 *スチルベンなどで組成される天然のブドウレスベラトロールはサーチュインを活性化する物質としてスタック* (STAC)と呼ばれています。
STAC:Sirtuin-activating compounds)

「長寿遺伝子を活性化するブドウ・レスベラトロール(resveratrol)とは」
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=158
 「 サーチュイン活性化物質スタック(STAC s)の発見」
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=608
 初稿: 2018/05/06改訂版:2024/11/13