ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)

第百二十話:「季節の指標から消える動植物の観測」

2021/03/01
最終更新:2026-09-08

彼岸桜(神奈川県藤沢市)

気象庁は、平成21年に桜の開花予想を終了宣言した際には、気象予報の一部が自由化されたので、民間の気象会社が地元からの情報などを基に独自の予報を出すようになったことも一因とされました。
今回、その流れを汲む位置づけから、鶯の初鳴き、チューリップの開花など、季節の訪れを示す指標として気象庁が続けてきた動植物の観測の大部分が、令和2年12月一杯で終了されました。
生息数が減って確認が困難になったり、温暖化の影響で指標自体が「季節外れ」となってきたりしていることなどが、原因とされたようです。
観測発信が70年近く続いて来ただけに、戸惑いの声も上がっていますが、「予報」から「防災」に軸足を移そうとしている気象庁の変化も背景にあると見られます。
この20年間で、土砂災害の危険度を示す「警戒情報」や「注意報・警報」よりさらに危険度を高めた「特別警報」が創設されたのも、その象徴と言えましょう。
「どんな情報がどのように届けられるのか」は、一般生活者にとっても、必要不可欠なことなので、気象庁の防災業務が重視されるべく気象行政が見直されることは、止むを得無いかもしれません。
 鶯の身をさかさまに初音かな      宝井其角それぞれにうかぶ宙ありチューリップ  皆吉爽雨山は朝日薄花桜紅鷺の羽        山口素堂 気象庁が観測をやめるのは、ヒバリ、胡蝶、トカゲ、タンポポなどと言った春の季語とされる動植物に留まらず、カッコウ、燕、鵙、各種のセミ類、揚羽蝶、シオカラトンボ、トノサマガエル、アマガエルなどの初鳴き、初見と、タンポポ、キキョウ、スミレ、彼岸花などの発芽、開花、そして、桃、アンズ、柿、栗 などの発芽、開花、満開、落葉といった合計51種目に亘りますが、その理由について、トノサマガエルを例に挙げ、個体が減ってきており、初見日が寒暖の差ではなく、発見力の差と連動するようになっていると指摘し、季節の移ろいを捉える指標でなくなってきている現状を挙げています。
 松風の空や雲雀の舞ひわかれ      内藤丈草又窓へ吹きもどさるる小てふかな    小林一茶蜥蜴出て既に朝日にかがやける     山口誓子たんぽぽや芝生をしめる花の鋲     溝口素丸 一方で、今回の観測終了には、批判の声も上がって居り、一般の多くの人々が生物季節に関心を示さなくなり、昆虫の激減や植物の変化に鈍感になってしまうと、文化芸術の喪失にもつながるとの指摘もあります。
なお、梅の開花、桜の開花から満開まで、アジサイの開花、銀杏の黄葉・落葉、楓の紅葉・落葉、ススキの開花の六種目の観察は続けるそうです。