癌(がん)と発癌物質のニュースと解説

長寿社会の勝ち組になるには(その41):
青少年の胃癌、胃潰瘍リスクを高めるNDMA含有 抗炎症剤

2020/01/12
最終更新:2026-09-12

1. AI時代の人口は量より質

減少傾向が続く日本国の人口は、おそらく1億人を割ることが避けられないでしょう。高齢化社会では亡くなる方が増え、昨年は最高の130万人を超え、新記録でした。それでもAI時代の人口は量より質。出生率にこだわり、育児環境を整える対症療法的な少子化対策も重要ですが日本国の繁栄を築いた中高年の知的レベルを将来的にも維持していくには、引退したその後継者対策がより必要です。

迫りくるAI時代の均質な知力、労働力はロボットに任せ若く、健康で柔軟な頭脳が、独創的なロボットを教育できる人材となります。育成は急務ですが、残念ながら、その対策は先進国より大きく遅れています。幼児、青少年の教育制度改革、健康維持と健康増進を進めれば先進1等国としての地位は簡単には揺らぎません。

2. 「護児健食」の薦め

幼児、青少年が健康を保ち30年後、40年後まで長期的に社会の第一線で活躍してくれることが日本国繁栄の鍵。そのためには脳や腎臓、肝臓、胃腸を傷める医薬品の過剰摂取や悪しき食生活習慣を排除し無ければなりません。歴史がなせるのか、国民は「お上」を絶対的に信頼しており、健康的な食生活でさえ、自己判断、自己責任で行動することに慣れていません。

3. 2020年1月9日:アメリカの連邦食品医薬品局(FDA)がNDMA汚染に歯止め

2018年ごろに大量の中国製、インド製の高血圧症、消化性潰瘍治療薬(ジェネリック医薬品原料)から強い発がん物質として知られる*N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出されました。以来、詳細な調査が始まっていましたが、NDMA検出は2019年に世界的な拡がりとなりました。
*NDMA(N-ニトロソジメチルアミン:N-nitrosodimethylamine )

2020年1月9日にアメリカの連邦食品医薬品局(FDA)はデントン・ファーマ社(Denton Pharma)社とアポロ・ファーマ社(Appco Pharma)が販売するラニチジン(Ranitidine)からN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出されたことで、(最高位の)自主回収を指示しました。とうとう、ついに、やっとリコールになったという感です。
*連邦食品医薬品局:Food and Drug Administration(FDA)

またジェネリック医薬品を世界中に販売しているマイラン製薬(Mylan Pharmaceuticals Inc)が販売するニザチジン(Nizatidine)にも同様理由で自主回収を指示しました。圧倒的な量を販売していましたから大事(おおごと)です。マイランが公表するニザチジンの効能は十二指腸潰瘍(duodenal ulcer patients)、良性胃潰瘍(benign gastric ulcers)。日本国内ではマイラン製薬の日本法人がニザチジンを販売をしています。

ラニチジン、ニザチジンは、H2ブロッカーと呼ばれる作用機序のヒスタミンH2受容体拮抗薬。壁細胞のヒスタミン受容体を遮断することで胃酸分泌を抑制し十二指腸、大腸などの消化性潰瘍、胃食道逆流症に有用とされています。

4. 医薬品による胃酸分泌抑制には重篤な副作用があります

幼児期の食生活が、長じてからの消化器潰瘍、胃癌急増の主要原因といわれるようになりましたが、発癌物質が遺伝子変異を招き、現実化するには数十年かかることがほとんど。NDMAを産生する食品の亜硝酸ナトリウムや制酸作用を持つヒスタミンH2受容体拮抗薬、NSAIDsなど抗炎症鎮痛剤は常に注意しなければならないでしょう。

発がん物質のNDMAを含有する赤肉食は、欧米に較べ日本人の摂取量は極端に少ないですが、日本はNDMAを産生する亜硝酸ナトリウムを添加した魚介など水産加工食品の世界的な大消費国。鍋物、焼き肉などの調合済みタレなども大部分が亜硝酸ナトリウムを添加しています。加工食品で特に問題なのは児童や青少年が好きなソーセージ。亜硝酸ナトリウムを添加したウィンナーソーセージの消費量が多いのは圧倒的に若者です。

胃酸には消化作用のほか細菌感染症などを撲滅する役割があります。ラニチジン等は重篤な副作用として、肝障害、徐脈、肺炎、胃癌症状隠蔽があり得るといわれ(wiki)、胃酸の減少によりクロストリジウム・ディフィシル腸炎(Clostridium difficile colitis)や感染症のリスクも増加します。

またアスピリン、ロキソニンなど非ステロイド性鎮痛抗炎症剤(NSAIDs)やストレス、ピロリ菌は胃潰瘍を悪化させます。
*NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug )

「最新免疫療法抗がん剤(PD1阻害剤)の効果を高める腸内微生物叢移植」

5. 亜硝酸ナトリウムが関与する悪玉のN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)

日本で良く引用されるのは「1957年にノルウェーの飼育動物(動物種は未調査)に肝臓がんの頻度が上昇した」報告。これに関して、1969年には大阪大学医学部や国立衛生試験所食品添加物部などから食品のニトロソアミン汚染研究論文が発表されています。

ノルウェーからの報告では動物に食餌としてニシンを与えており、その保存剤として亜硝酸ナトリウムを使用していたとのこと。亜硝酸ナトリウムは日本でもほとんどの水産加工品に使用されている添加化学品です。調査の結果、亜硝酸ナトリウムがニシン体内のジメチルアミンと反応してニトロソジメチルアミン(NDMA)が生成されていました。当時の研究者らは、癌発生はNDMAが原因だと特定しましたが、21世紀になってからの食事調査により、亜硝酸やニトロソアミンを含有する食品の摂取が、胃がんと関連があることが知られるようになりました。

「加工肉の亜硝酸ナトリウムはトップクラスの発がん物質」

6. 国際癌研究機関(IARC) が亜硝酸ナトリウム添加食品を発がん性物質に指定

2015年には世界保健機関(WHO)傘下の(国際癌研究機関(IARC) が、亜硝酸ナトリウムを含む水産加工品加工肉を「発がん性が確実:carcinogenic to humans」とされるグループ1 (Group I)に指定しています。*IARC:the International Agency for Research on Cancer。亜硝酸ナトリウム(Sodium Nitrite:*亜硝酸ソーダとも呼ばれる)は水産加工品やハム、ソーセージなど加工肉の発色剤・防腐剤として使われ、タンパク質がニトロソ化された発がん性物質のニトロソアミン(総称)を生成します。赤肉に関しては「おそらく可能性がある:probably carcinogenic to humans」というグループⅡA (Group 2A)」に分類されています。

ニトロソアミン(nitrosoamine)は加工肉では毎日50グラム食べるごとに大腸がんのリスクが18%高まるとされ、体重40キロ以下の児童はリスクがより高くなるといわれます。肉に含まれる鉄分(ヘム鉄)や、発色、保存に使用される亜硝酸ナトリウム添加の食品は調理法によりニトロソアミンの量が変化するといわれます。

「鉄剤注射は肝腎を害し寿命を縮めるナッシュ(NASH)、腎臓疾患、糖尿病の原因にも」

100℃以下での調理ではほぼ増えることはありませんが、高温調理ではその量が増える傾向にあるといわれます(Wiki)。ニトロソアミンは胃酸のような強酸環境下でも生成しやすいようです(Wiki)。

7.(参照)日本で販売されている(いた)NDMA汚染医薬品

2018年11月:高血圧症治療薬バルサルタン(valsartan)のジェネリック医薬品にNDMAが発見されたことを厚生労働省が発表。*バルサルタン(ノバルティスの商品名ディオバン)は重篤な副作用があることで知られていましたが、ノバルティス製薬が大学、研究所とともに不正データ工作。偽装が発覚するまでに1,000億円を売り上げていた「ディオバン事件」で知られています。

2018年7月6日:ジェネリックの「あすか製薬」が高血圧症治療剤バルサルタン錠を自主回収すると発表。中国の製造所で作られた原薬から発がん性物質「N-ニトロソジメチルアミン」が発見されました。

2019年9月26日:グラクソ・スミスクライン株式会社が販売する胃酸分泌抑制薬「ザンタック錠」からNDMAが検出され自主回収。「ザンタック錠」はラニチジン同様にヒスタミンH2受容体拮抗剤。
2019年10月23日:大原薬品工業がラニチジン同様物質のニザチジンカプセル「オーハラ」を自主回収。

2019年12月3日:ゼリア新薬がヒスタミンH2受容体拮抗剤のアシノン錠を自主回収。

2019年10月ごろより12月:富山のジェネリック専門医薬品会社日医工がラニチジン錠を少しずつ自主回収。以下は日医工のラニチジン錠の説明書
「ラニチジン錠は胃粘膜のヒスタミンH2受容体拮抗作用により、胃酸分泌を抑えます。通常、胃潰瘍、逆流性食道炎などの治療、急性胃炎や慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変の改善、および麻酔前投薬として用いられます。その他に十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、上部消化管出血に用いられます」

 

厚生労働省の通達対象となった医薬品会社
グラクソ・スミスクライン株式会社
テバ製薬株式会社
マイラン製薬株式会社
株式会社陽進堂
小林化工株式会社
沢井製薬株式会社
鶴原製薬株式会社
東和薬品株式会社
日医工株式会社
日本ジェネリック株式会社
武田テバファーマ株式会社
ゼリア新薬工業株式会社
田辺三菱製薬株式会社
大原薬品工業株式会社
ニプロ株式会社

8.(参照)ラニチジン、ニザチジン回収を指示する厚生労働省の事務連絡内容

事務連絡令和元年9月17日
各都道府県衛生主管部(局) 御中
厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課
厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課

「ラニチジン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について」

標記について、ラニチジン塩酸塩又はラニチジンと類似の化学構造を有するニザチジンを製造販売する事業者宛てに、別添のとおり事務連絡を発出しましたので、貴管下における事業者に対し、ご指導いただきますようお願いいたします。また、下記の事項についても併せてご了知いただきますようお願いいたします。

1.経緯
今般、欧州医薬品庁(EMA)、アメリカ食品医薬品局(FDA)等において、ラニチジン塩酸塩の製剤及び原薬から微量のN‐ニトロソジメチルアミン(以下「NDMA」という。)が検出された旨の発表がなされました。NDMAが検出された原因については、現在、各国の当局が協力し、調査を進めているところです。厚生労働省では、日本国内における製造販売業者に対し、ラニチジン塩酸塩等の分析を指示するとともに、予防的措置として、分析結果が明らかになるまでの間、ラニチジン塩酸塩の新たな出荷を行わないよう指示しました。なお、分析の結果、品質に問題がないことが明らかになった場合には、出荷を妨げないこととしています。

2.想定される健康被害のリスクについて
海外において検出されたNDMAの量は数ppm程度と微量であるものの、現在、安全性の評価を行っているところであり、結果がまとまり次第お知らせする予定です。

3.ラニチジン塩酸塩を服用している方等への対応について
FDAは、現時点では服用を止めることまでは求めていませんが、服用継続を希望しない患者に対しては医療従事者に相談するよう、アナウンスを行っています。ラニチジン塩酸塩の服用について照会等があり、他の薬剤への切り替え等の対応を希望される場合には、他の治療選択肢について医師又は薬剤師に相談していただくよう回答方お願いいたします。また、今後新たに治療を開始する場合においては、同様の効能・効果をもつ他の薬剤の使用を検討いただくよう、医療機関等に対し、周知方お願いいたします。

別添
事務連絡 令和元年9月17日

厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課
厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課

ラニチジン塩酸塩等における発がん性物質に関する分析について(依頼)
今般、アメリカ食品医薬品局(FDA)及び欧州医薬品庁(EMA)より、ヒスタミンH2受容体拮抗薬であるラニチジン塩酸塩の製剤及び原薬から発がん性物質である N‐ニトロソジメチルアミン(以下「NDMA」という。)が検出されたことに伴い、ラニチジンを含有する医薬品に関する公式な評価プロセスを開始する旨のアナウンスが発出されたところです。

これを踏まえ、ラニチジン塩酸塩又はラニチジンと類似の化学構造を有するニザチジンを製造販売する事業者においては、下記のとおり対応いただくようお願いいたします。なお、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(以下「サルタン系医薬品」という)については、昨年、NDMA等が検出され、国際的に回収等が行われたことを受け、「サルタン系医薬品における発がん性物質に関する管理指標の設定について(依頼)」(平成30年11月9日付け薬生薬審発1109第6号・薬生安発1109第4号・薬生監麻発1109第1号医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、医薬・生活衛生局医薬安全対策課長、医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)により、製造販売業者に対し、管理指標値に基づく製造管理及び品質管理の実施をお願いしているところです。

1.製造販売するラニチジン塩酸塩及びニザチジンについて、有効期限内の製品に使用されている原薬の製造所ごとに、製造工程における亜硝酸又は亜硝酸塩の混入リスクの有無及びその根拠並びに2.で実施する分析結果が得られる時期の目処を9月30日までに、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課宛て報告すること。亜硝酸及び亜硝酸塩については、サルタン系医薬品においてNDMA等の生成の原因の一つとなっていることが報告されており、本件について現時点において関連を否定できないことから、報告を求めるものである。

2.有効期限内の製品及び当該製品に使用されている原薬についてNDMAの分析を実施し、その結果を厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課宛て報告すること。分析は、バリデーションされた方法であって、適切な検査水準にて実施する必要がある。なお、検査方法は以下の参考情報を参照するとともに、NDMAが0.32ppm以下※であることを確認できるような検査水準で分析を実施すること。また、分析の結果、0.32ppmを上回ることが否定できない場合には、取引先等への情報提供及び市場に流通している製品の回収を検討すること。
※ 平成30年度第9回医薬品等安全対策部会安全対策調査会における報告のとおり、NDMAの許容摂取量が0.0959µg/日であることから、ラニチジン塩酸塩及びニザチジンの一日の最大用量(300mg)から算出し、0.32ppmを水準とする。

3.ラニチジン塩酸塩については、2.の分析結果が明らかになるまで、当該製品の新たな出荷は行わないこと。ただし、ニザチジンについてはこの限りでない。なお、2.の分析結果が明らかになるまでの間、NDMAの混入リスク等を示唆するその他の根拠がない限り、すでに市場に流通している製品の回収を行う必要はないこと。

参考情報:
○米国におけるNDMAの分析法
https://www.fda.gov/media/130801/download(LC/HRMS法)(外部サイトが開きます)

○平成30年度第9回医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料
>NDMA及びNDEAの管理指標の設定について(外部サイトが開きます)

以上

(別記)
グラクソ・スミスクライン株式会社
テバ製薬株式会社
マイラン製薬株式会社
株式会社陽進堂
小林化工株式会社
沢井製薬株式会社
鶴原製薬株式会社
東和薬品株式会社
日医工株式会社
日本ジェネリック株式会社
武田テバファーマ株式会社
ゼリア新薬工業株式会社
田辺三菱製薬株式会社
大原薬品工業株式会社
ニプロ株式会社