「癌は一日にして成らず」。 がん遺伝子が活性化するまでには人体の防御システムとの永い戦いがあります。 がん遺伝子が活性化する最大の原因は加齢ですが、中高年のすべてが発症しているわけではありません。 発症率は70代でも3人に1人くらい。2人に一人という説もありますが未然に防いでいる方々がメジャーです。 発症メカニズムを学び、何十年と続く環境や、毎日の食生活、生活習慣に気配りすれば、勝ち組となるのは難しいことではありません。 すでに発症し、治療を受けた方も再発防止に勝ち組参入を目指してください。 今からでも遅くありません。 *医学的には上皮細胞に発症する悪性腫瘍が「癌種:carcinoma」、それ以外の部位の悪性腫瘍を「肉腫:sarcoma」 あらゆるところに発症するのが「がん:cancer」と分けていますが本稿では全てのケースを誰にもわかりやすい一般的な「がん」 または「癌」と表しています。1. 米国の億万長者が「終わりなき生命」の研究に多額の投資2018年1月末ごろのニューヨークタイムスに「The Men Who Want to Live Forever」というコラムが載りました。 訳して「永遠の生命を求める人々」 「死は回避できる」「寿命は永遠」などをテーマに、その達成を目指す、米国西海岸の資産家グループが取材対象。 Googleがカリコ長寿研究所(Calico longevity lab)を設立し、アマゾン創立者のジェフ・ベン(Jeff Bezos)がカリコの「長寿」「永遠の生命」研究に多額の投資。 多くの億万長者たちがグループを作って、独自に生命科学を研究する法人The National Academy of Medicineの「終わりなき生命」研究に多額の投資をしているそうです。
IT産業の巣となっているシリコーン・ヴァレーの資産家たちの思想的なバックボーンの一人がカリフォルニア大学アーヴィン校の*マイケル・ローズ教授。 スペイン時代からフロリダ州などに伝わる「若返りの泉:The Fountain of Youth」伝説の伝道者のごとく、ウェブ上に「マイケル・ローズの55の提題:*Michael Rose’s 55 *Theses」を掲載し健康寿命のあり方を提唱しています。 *Professor Michael Rose;Director and Professor at the Department of Ecologyand Evolutionary Biology : the University of California, Irvine*「55 Theses on the Power and Efficacy Of Natural Selection for Sustaining Health」 *Theses(ティーシズ:博士論文などの提題)2. ミトコンドリア遺伝子(mtDNA、mtRNA)が癌の転移、湿潤に関与細胞内小器官*ミトコンドリアを様々な角度から覗けるようになったことでミトコンドリア内に発見された細胞内DNAと類似するミトコンドリアDNAの機能解明が進んでいます。 筑波大学大学院 生命環境科学研究科の林純一教授らは特定の発がん性化学物質がDNAよりもmtDNA(ミトコンドリアDNA)に結合しやすく、がん組織のmtDNAには正常組織よりも高い割合で突然変異が蓄積していることを発見しました。 一般的には細胞内で眠っていた癌(がん)遺伝子が何らかの刺激により活性化し正常な細胞周期が機能しなくなった制御不能状態が癌(がん)といわれますが、その細胞分裂の過程(周期)が観察できるようになってからは、幾つもの新たな発見がありました。 細胞分裂が完成し次の分裂が始まるまでの一連の過程は細胞周期(cell cycle:セル・サイクル)とよばれます。 細胞周期では*DNAやミトコンドリアなどの細胞内小器官の複製がおこなわれる時期が間期(interphase)と呼ばれる最も重要な過程。 林教授らはここに癌予防の鍵を見出しているのでしょう。
「有酸素下で行われる癌細胞組織の代謝では、その糖質消費が通常組織の10倍以上」との論文はワールブルク効果( the Warburg effect)として広く知られていますが、その骨子である「好気的解糖:aerobic glycolysis」の分子レベルでの解明は後の研究を待つことになります。 20世紀末ごろより、21世紀に入ってヒトの遺伝子解析が完了し、顕微鏡と使用技術の進歩にともない、数々のミトコンドリアと癌に関する論文が発表されるようになりました。
世界の優れた大学トップテンに入り技術系学生の教育に評価が高い*スイス連邦工科大学のコッペノール教授(Willem H. Koppenol )は教材として「ワールブルグ博士の癌細胞代謝に関する昨今の概念への貢献*」を紹介する論文を書いています。 * Otto Warburg's contributions to current concepts of cancer metabolism* スイス連邦工科大学:The Swiss Federal Institutes of Technology6. 癌細胞は代謝で活性酸素を生じ、遺伝子変異を起こしますワールブルク効果である好気的解糖(aerobic glycolysis)は古くて新しい発見。 今でも癌と好気的解糖に関して数多くの論文が発表されていますがペンシルバニア大学アブラムソンがんセンター(Abramson Cancer Center)のダン博士(Chi V. Dang)は「Links between metabolism and cancer:癌細胞と代謝の関係」の中でがん細胞の代謝に関して以下のようにまとめています。 「癌細胞の代謝では活性酸素が生じ、遺伝子変異を起こします。 遺伝子変異によりがん遺伝子が活性化し、呼吸活性が低下。 がん抑制遺伝子*(別途解説)を不活性化させた結果、ワールブルク効果である好気的解糖(aerobic glycolysis)に導きます。 これによって生じるグルコース(glucose:ブドウ糖)は大量の発酵糖質となり癌細胞の栄養素として癌細胞を増殖させていきます。 カロリー過剰は癌リスクを増幅させ、カロリー制限は癌細胞から個体を保護しますが、ミトコンドリアのオートファジーである損傷遺伝子のマイトファジー(mitophagy:自食作用)は生体防御機構となっています」 「体細胞が酸素呼吸によらず発酵に依存することで細胞が退化し癌細胞が発生する」 との別の論文もあります。7. 癌細胞組織の糖質消費をPET(陽電子放射断層撮影装置)で検査する意味PET(陽電子放射断層撮影装置:positron emission tomography) は高価な医療機器ですから設置医療機関は限られます。 かっては主として脳神経、脳卒中など頭部の検査に用いられてきましたが、全身の部位の糖代謝レベルを調べることができるため、解り難い原発巣、拡散を発見するにはCT,MRIに較べて精度が高いといわれます。 設備があるところでは多様な検査に用いられ、必要な方には保険が適用されます。 発がん検査では全身に行きわたる放射線薬品(18F-FDG)を使用しますので、その被ばく量を懸念もされますが、機器の放射線自体はCT,MRIに較べて少ないといわれ、発がん部位検査(ワールブルク効果の腫瘍組織糖代謝レベル検出)に推奨されています。 ただし癌の形状確認にはPETとCTを組み合わせる検査が必要となりますから、放射線被爆は常に検討されるべき事項です。 癌化細胞の活性化が考えられる患者には放射線被爆が引き金となることも予想されますから適用の必要性は専門家の判断が不可欠です。