タバコから始まった遺伝子組み換え(GM)農産物は、1996年にモンサント社がトマトなどの組み換え食品を発表し、食材の生産が始まった頃から賛否の議論が沸騰し始めました。
ヨーロッパの行政当局や日本の消費者には組み換え食品(genetically modified)
反対論が根強くあり、EUは組み換えダイズ、トウモロコシ、キャノーラやワタの輸入承認を2014年現在も依然留保しています。
1.遺伝子組み換え食品(GMO)が嫌われる10の理由 何故日本やEUでは遺伝子組み換え食品が嫌われるのでしょうか?
反対派が多数存在するのにもかかわらず、世界全体で見ればGMO食品は減少しておらず、1996年に企業製品化してから、僅かながらも年々増加しています。
特に安全性問題が表面化した渦中でも1999年から2004年までの5年間の統計では、作付け面積が倍増しています。
食材ではない綿に関しては、急増といえるでしょう。
発展途上のアフリカ諸国やブラジルの生産増が続いているためこのトレンドは2014年までの10年間も続いています。
2004年当時に組み換え農産物に反対する人々の根拠には、次のようなことがあげられていました。
a.運び屋(ヴェクター:vector)の有害論 遺伝し組み換えには組み換える遺伝子を外部から細胞内に搬入しますが、その運び屋に細菌類を使用することがあります。
この菌自体にもいろいろな遺伝子があり、その無害性が立証できていないことが多いといわれます。
「これまで知られていない、検出できない毒性が有るかもしれない」
「これまでの遺伝子の機能を阻害するかもしれない」
ところが多くの学者の危険情報、論文は主張根拠が分子レベルで説明できていないと開発会社からは無視、または否定されているのが現実。
何世代先の結果を待てばよいのか?など安全性とは何かについて議論する必要があるでしょう。
b. 困難な有害物質の検出 食品の成分構成(composition)は生育状況などで、収穫毎に異なり、安全性を確認することは、添加物、薬品、化学物質を検出して安全性を議論することよりはるかに難しいc. 少ない毒性研究(Many Opinions but Few Data)
組み換え食品の毒性は「議論が多い割には、安全であることの研究報告が少ない」
といわれます。
大部分の消費者がGM食品と品種改良食品との区別ができていませんから少なくとも安全性を確保するにはどうすべきかの指針が必須。
アフリカ諸国などが必要性の「錦の御旗」となっていますが、飢餓が蔓延している後進各国と飽食の先進国、新興国とは議論を切り離すべきでしょう。
「食品として数百年間以上問題が無い」ことが本当の安全とするならば当分は安全性の確認ができないといえるでしょう。
経済性最優先のGMO素材開発会社や、普及させたい米国や日本政府の安全性解説にはいまだに人工胃液、腸液や動物実験に基づいたものも多く、人間の摂食期間実績もまだ数十年。
安心して摂食しろと言われても無理があります。
d. 不明朗な安全性の根拠(substantially equivalent)
これまでに実用されている安全性の確認は、組み換え食品と非組み換え食品の構成成分を比較しています。
構成成分に大きな差が無いときに「全般的に同等」(substantially equivalent)という表現で安全とみなしていますが、この場合は動物実験などが無いままに特許が与えられているといわれます。
保険会社も将来予想される損害賠償の危険性を認めて、消極的といわれます。
日本では行政が「農産物で永年継続されている品種改良と何ら変わりない」と解説することに不信感を持つ人が多々います。
細胞レベルで強制的に遺伝子を操作する組み換えと、農産物改良研究者が花粉操作などで作る品種改良とは根本が異なります。
植物の成分組成を人為的に組み換えたり、一部を除去したりすること(改変)や「体に良い成分だけを選別、作りあげた合成油」として数種類の合成食用油が開発もされていますが、本当の意味の安全性の確保はなされていません。
「化学合成のジアシルグリセロール食用油に疑問符」
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=176
e. 未熟なテスト手段 安全性を確認しようにも現在のテスト方法では既存の毒性しかわからないといわれます。
新しいテスト方法が出現しない限り、安全性は確認できないといわれます。
f. 組み替え種子生産会社への不信感 組み換え遺伝子の製造元に全ての生産が支配される。
種子生産会社が監視部隊を編成して、種が他に流出しないよう監視していることが、問題視されています。
また製造会社による独占的価格支配により、発展途上国の困窮する食糧事情改善には役立たないとの説があります。
多数のシンパ学者の援護論文。強引な開発種の秘密保護と利益保護。
不利な実験結果の隠蔽。
強力な援護団体の設立と大規模な広報活動。
消費者が不信感を持つ企業行動、倫理も続いています。
g. 危険視される雑交配 花粉の飛散により非組み換え食品の栽培と混交する恐れがある。
干渉地帯を設けても自然交配を防ぐことが難しい。
組み換え遺伝子は優性遺伝子のために、非組み換え作物が支配される。
この場合にも監視部隊は自社製品であると主張して損害賠償を要求する(真実は未確認ですが実例があるそうです)。
h. 危険視される生態系の破壊 自然の生態系に対する、新しい農産物の汚染が検証されていない。
i. 期待を裏切る生産性 組み換え農産物の生産性が、既存のものに較べ、必ずしも上がらないという生産者もいます。
j. 栄養面での劣性 大豆などの組み替え食品は、非組み換えより、イソフラボンなどの栄養素などが不足しているという報告があります。2.インディペンデント紙の指摘とプッタイ博士の論文 英国の有力紙インディペンデント紙(The independent)が、「モンサント社がGMO食品トウモロコシ(MON 863)の動物実験で、腎臓や血管の健康に有害との結果が出ている事実を隠蔽している」
と発表し、波紋を広げたのが2005 年。
*モンサント社:
世界でもっとも売れている農薬の一つラウンドアップ・レディーを開発した.
現在は米国の遺伝子組み換え食品開発最大手.
5月22日に掲載された記事はインディペンデント紙で6年にわたり反対キャンペーンを続けているジェフリ・リーン記者(Geoffrey Lean, Environment Editor)が取材しており、必ずしも公平ではないかもしれません。
しかしながら、有力紙のインディペンデントだけに、組み換え農産物生産者にかなりの打撃を与えました。
*GMO:Genetically Modified Organism反対派の科学的裏づけとなっているのは、プッタイ博士の研究が主となっているようです。
*プッタイ博士(Arpad Pusztai)のプロフィール ハンガリー出身。ブタペスト大学化学学部卒業。
ロンドン大学にてバイオ化学の博士号取得。
約50年間ブタペスト大学、ロンドン大学、スコットランド・ローウェット研究所(the Rowett Research Institute)などで、レクチン(植物たんぱく質)を主体のバイオ化学研究を続ける。
世界的なバイオ科学者(biochemist)として知られ特にレクチンが遺伝子組み換えでどのように変化し、人体に有害であるか、ジャガイモを中心にした研究報告が多い。
遺伝子組み換えジャガイモは有害物質が組み込まれていると指摘した遺伝子組み換え農産物反対論者のサポーターでもある。
研究所と路線が異なるとの理由でローウェット研究所を解雇されたといわれる。3.日常的に摂食されている遺伝子組み換え食品 GMOは食用油や大豆、トウモロコシ加工食品として、すでに市場に定着しており、大半の消費者が相当量の摂食をしています?。
醤油やコンスターチなどは代表的な遺伝子組み換え食品。
豆腐や納豆などは、非組み換え食品の選択が容易?ですが、食品全体に占める比率は大きくありません。
消費者は食用油、加工食品、外食などによって、より大量の遺伝子組み換え食品を摂食しているのが実情です 。
?日本には基本的に組み換え米がありませんが、高級日本酒の添加物に多い醸造用アルコールは組み換え食材。
排除は安価な「米だけの酒」で防げますが、風味が落ちます。
?豆腐には「組み換え大豆を使用しておりません」との表示があるにかかわらず3分の1以上の製品から陽性反応がでたという調査があります。4.遺伝子組み換え食品の主要生産会社 モンサント、デュポン、バイエル各社にに集約されつつあります。
全て多国籍企業ですが、販売の難しい、日本やヨーロッパからは撤退気味。
最新の研究には、栄養価を高める食品、アレルゲンを除いたお米、乾燥、塩害に強い作物、ワクチンを組み込んだ食べる医薬品、トランス脂肪酸対策(オレイン酸増量)等等がありますが安全性は不明(というよりは長期間の検証が必要です。
a. モンサント(Monsanto Company)(米国)
b. アベンティス クロップ サイエンス(仏)(バイエルが買収、2001)(菜種)
c. オプティマム・クオリティー・グレインス(Optimum Quality Grains L.L.C.)
(米国デュポン傘下)
d. エマージェント・ジェネティクス(Emergent Genetics, Inc)(旧Stoneville Pedigreed Seed)(米国)
(全米第3位の綿種子生産会社、2004.4モンサントと合併)
e. バイエル・クロップサイエンス(Bayer Crop Science)(ドイツ)
f. パイオニア・ハイブレッド(Pioneer Hi-Bred International, Inc.)(デュポン傘下)(トウモロコシ、メイズ)
g.ダウ・アグロケミカル(Mycogen Seeds/Dow Agro Sciences LLC)(米国)(キャノーラ油)
h. シンジェンタAG (Syngenta Seeds)(スイス)(旧ノバルティス・シード) (とうもろこし)
世界最大の農薬生産会社.5.遺伝子組み換え食品の種類と組み換え目的 日本は種苗の輸入が原則的に禁止されています。
日本で販売を許可されている組み替え食品(GMO)で厚生労働省より安全が認められている品種がありますが、限られています。
組み替え目的は様々ですが大別して、除草剤耐性(大豆、菜種など)と害虫耐性(とうもろこし、綿など)に分けられます。
また、その他に栄養素を強化する(改変)ものがあります。
キャノーラ食用油のように当初は菜種の毒性をなくすために開発されたものもありますが、現在のキャノーラは除草剤耐性品種、減トランス脂肪酸品種なども開発されています。
<品種と厚生労働省の代表的な認可ブランド名>*大豆 :オレイン酸を多く含む、特定の除草剤(ラウンドアップ・レディー)で枯れないA) ラウンドアップ・レディー・大豆40-3-2系統。
B) ラウンドアップ・レディー・大豆260-05系統。(ラウンドアップ・レディーは除草剤の名前)
*じゃがいも :害虫に強い、ウィルスに強いA) ニューリーフ・ジャガイモ BT-6系統。
B) ニューリーフ・ジャガイモ SPBT02-05系統。
C) ニューリーフ・プラス・ジャガイモ RBMT21-129系統。
D) ニューリーフ・プラス・ジャガイモ RBMT21-350系統。
E) ニューリーフ・プラス・ジャガイモ RBMT22-82系統。
*菜種 :特定の除草剤で枯れないA) ラウンドアップ・レディー・カノーラ RT73系統。
B) HCN92。
C) WESTAR-Oxy-235。
*とうもろこし :害虫に強い、特定の除草剤で枯れないA) ラウンドアップ・レディー・トウモロコシ GA21系統。
*わた :害虫に強い、特定の除草剤で枯れない.綿実油を採るために栽培されています。
A) ラウンドアップ・レディー・ワタ 1445系統。
B) BXN cotton 10211系統。
*甜菜 :特定の除草剤で枯れないA) ラウンドアップ・レディー・テンサイ 77系統。
*添加物 遺伝子組み換え機能強化農産物の添加物はキモシン、αアミラーゼ、リパーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼの安全性が確かめられています(厚生労働省)。
< 添加物生産主要メーカー> A) ノボザイム(Novozymes A/S)(デンマーク)
B) ヒスト・ブロカデス(GIST-BROCADES N.V.)(オランダ)(山之内製薬傘下)
C) ジェネンコ・インターナショナル(Genencor International,Inc.)(米国)
D) ホフマン・ラ・ロシュ(F.Hoffmann-La Roche)(スイス)
E) ハンセン(CHR. HANSEN A/S)(デンマーク)6.遺伝子組み換え食品であることの表示 日本では遺伝子組み換え食品(GMO)の全てに表示があるわけではありません。
醤油や食用油など大豆の加工品は、ほとんどが遺伝子組み換え品種ですが、そのことは表示されていません。
また、大豆、とうもろこし、ジャガイモの使用については、組み替え種が5%以上入っていない商品は表示の必要がありません。
加工食品で判別がむつかしい商品は遺伝子不分別という表示になります。7.遺伝子組み換え農産食品の主要生産国 組み換え植物普及を推進する国際アグリバイオ事業団(ISAAA)調べ(2002年)
一部は種苗開発会社モンサント社の資料?括弧内生産量は、左が2002年、右が2004年*アメリカ (3900万ヘクタール):世界の遺伝子組み換え作物の約66%(4,760万ヘクタール):世界の遺伝子組み換え作物の59%*アルゼンチン (1350万ヘクタール)(1,620万ヘクタール):
世界の遺伝子組み換え作物の20%。
アルゼンチン大豆総栽培面積のほぼ100%が遺伝子組み換え*カナダ (350万ヘクタール)(540万ヘクタール):キャノーラ菜種の生産が主体。
*ブラジル (2002年は不明)(500万ヘクタール):2004年に中国を追い越しました。
大豆が中心です。
*中国 (210万ヘクタール)(370万ヘクタール):綿が中心。
※ヨーロッパ各国の生産量は非常に少なく、日本ではほとんど生産していません*New主要生産国/2014年公表:
遺伝子組換え作物栽培トップ5カ国:米国、ブラジル、アルゼンチン、インド、カナダ中国がトップ5か国から脱落したのは組み換え食材否定論者の急増で禁止区域が広まっているのが原因か.
漸増しているのはコットン.
アメリカ:7010万ヘクタールブラジル:4030万ヘクタールアルゼンチン:2440万ヘクタールインド:1130万ヘクタールカナダ:1080万ヘクタール中国:420万ヘクタール8.遺伝子組み換え農産食品の生産量 大豆、トウモロコシ、ナタネ、ワタが4大栽培作物。
これら4作物の世界での総栽培面積(2億8,100万ヘクタール)の29%(8,100万ヘクタール)が遺伝子組み換え作物となっています(2004年)
*大豆 (3650万):大豆総栽培面積の62%(4,840万ヘクタール):
大豆総栽培面積の56%.遺伝子組み換え作物全体の6割を除草剤耐性大豆が占めているそうです(モンサント資料)
?括弧内生産量は、左が2002年、右が2004年*とうもろこし (1240万ヘクタール)(1,930万ヘクタール)
*わた (680万ヘクタール)(900万ヘクタール):インドで急増*菜種 (300万ヘクタール)(430万ヘクタール)
*2014年の最新データ (生産企業及び関連機関の発表数字)
28カ国で1800万人の農業生産者が遺伝子組換え作物を栽培総面積:1.815億ha/2014年.
10年間で倍増以上となりました(8,100万ヘクタール/2004)9.遺伝子組み換え食品(GMO)を安全とする生産者の根拠 害虫の消化管はアルカリ性ですから、組み換え食品のBtタンパク質(バチルスチューリンゲンシス)は害虫の消化管のみで活性化し、受容体に吸収されて、消化管を破壊します。
人間など哺乳類、鳥類の胃は酸性ですから、Btは活性化せず、その腸には、Btの受容体もありませんから、影響なく排泄されます(厚生労働省の解説)。
厚生労働省では、対象食品の組み込み遺伝子、ベクター、新しい蛋白質、栄養素などを調査して、既存の食品と比較し、異常な変化などが無いかどうかを調べていますが、対象食品のアレルギー抗原に関する検査もしています。
ただし、動物や人工胃液などを使用した 実験結果で安全と決めていることがあり、上記の消化管の解説には反論も多々あります(2004年現在)。
国際的な安全性評価基準は2000年から2003年までにコーデックス委員会において作られていますが、日本はこの委員会において、中心的な役割を果たしている遺伝子組み換え推進先進国と言えるようです。
初版:2003年08月29日 以下は部分改訂のみ改訂版:2003年10月09日 改訂版:2005年06月10日 改訂版:2008年10月10日 改訂版:2012年06月15日 改訂版:2015年05月22日