消費者運動のターゲットとなったマクドナルド社のトランス脂肪酸
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1.トランス脂肪酸のマクドナルド訴訟とは 消費者がトランス脂肪酸の危険性に気づき、食材、添加物に選択がむつかしい外食から排除しようとする運動。10年前にカリフォルニア州で始まりました。最初の標的は外食産業の雄であったマクドナルド。トランス脂肪酸排除を無視された消費者団体はマクドナルド相手の訴訟に持ち込みました。その後2005年2月11日、米国カリフォルニア州マリーン郡(Marin County)の上級裁判所(The California Superior Court)はトランス型脂肪酸(トランス脂肪)に関する二つの訴訟の結審を発表。原告は「トランス脂肪禁止」(BanTransFats.com 、Stephen L. Joseph代表)サイトと、キャサリン・フェック(Katherine Fettke)氏を代表とする集団訴訟グループでした。 訴訟内容 マクドナルド社は2002年9月に「これからはトランス型脂肪酸を減じた食用油を使い、2003年2月までにその作業を終える」と公表した。マクドナルド社は、消費者うけする、上記の宣伝を続けたにもかかわらず、実際にはトランス型脂肪酸を減じた食用油を使っておらず、その後の努力もしていなかった。マクドナルド社は、「その事実を意図的に隠蔽し、利用した消費者に損害を与えた」 結審内容 裁判所はマクドナルド社に全米心臓協会(American Heart Association)に700万ドル(約7億7千万円)を寄付し、トランス型脂肪酸の知識普及などに使用することを命じました。また現在のトランス型脂肪酸の使用状況を消費者に知らせる広報活動に1.5百万ドル(約1.65億円)を投じることを命じました。この裁判では、裁判官から「トランス型脂肪酸が心臓血管に与える害について、広く国民に周知させるべき」とのコメントがあったようです。 2.マクドナルド社の商品とトランス脂肪含有量(当時) フレンチフライポテト(大)6グラム、焼きアップルパイ4.5グラム 3.マクドナルド訴訟の背景 2002年に国立医科学アカデミー(the National Academy of Science’s Institute of Medicine)がトランス型脂肪酸の消費は極力抑えなければならないと、公式に発表。また世界で始めてになりますが、デンマークが「トランス型脂肪酸を食品から追放する法律」を2003年に成立させることが決定されました。マクドナルド社はこのタイミングに合わせて、新しい差別化の戦略を打ち出したのでしょう。しかしながら廉価な大量販売商品を扱う食品加工業者には、トランス脂肪を含まない食品はコスト的に不可能に近い難題。水素添加(partially hydrogenated)食用油は、(日本では)現在でも、ほとんどの外食産業で使用されていますから当時は不可能に近かったと思われます。当時の状況ではトランス脂肪フリーの食用油は価格が3倍以上になることが予想されていました。マクドナルド社の努力にもかかわらず、その後の切り替え作業が難航し、公表したことが実行できなかったのでしょう。当時の米国健康、医療関連のマスコミは、マクドナルド社の敗訴にもかかわらず、マクドナルド社に好意的で、その行動を評価していたようです。マーケッティング戦略とはいえ、ほとんどの企業が行動を起こさないトランス脂肪の追放に意欲を見せたからです。そんなマクドナルドがコストダウンに奔走し、食の安全性を二の次にするようになったのは、その後激化した外食産業の生き残り競争だったことは想像に難くありません。 4.トランス脂肪フリーの町、ティビュロン(Tiburon:カリフォルニア州マリーン郡) サンフランシスコからゴールドゲートブリッジをわたりサンラファエル方面に向かうと、風光明媚なティビュロン(Tiburon:人口8.800人)町があります。マリーン郡(Marin County)に属するこの町は小さな半島に位置し、そこからはサンフランシスコの美しい町並みや夜景が遠視できます。隣接のベルヴェデール(Belvedere)や、アーティストで有名なサウサリート(Sausalito)とともに、白人(88%)の高学歴知識人が多く居住することで著名な町。この辺りはヨットが盛んで、有名なサンフランシスコ・ヨットクラブがあります。このティビュロンの町がマクドナルド訴訟の本拠地となりました。ティビュロンのレストランでは極力トランス脂肪を使用しない食事を提供し、完全に追放しているレストランには緑のハート(green heart stickers)が付けられていました。全米で始めての「トランス型脂肪酸のない町」(First Trans Fat-Free City)を目指してのキャンペーンは、その成果が各国からも注目されています。 5.日本でも始まった消費者の安全性志向 日本でも健康志向、安全性志向の動きは数十年来ありますが、産業として成り立つほどの規模ではなく、あくまでも少数派。製造、販売関係者は建前として安全、健康を謳(うたい)ますが、コストがかからず、特に目立つ部分だけ。工業化された食品生産、食品加工業、外食企業は安全性より利益優先。コストダウンに励むのが一般的な姿勢でした。ところが、そんなトレンドに反旗を翻(ひるがえす)ような動きがあります。去年秋ごろよりバター供給が極端に細っていることです。年が明けてからも回復傾向はみられません。意味なく買い占める国民性もあると思いますが、消費者がバターの健康面における重要性に気付いたことが不足の最大原因かもしれません。豊かに育った世代のメリハリの効いた健康志向。無駄遣いをしないかわりに必要なものへの出費は惜しまない。長く続くバター不足によってマクドナルドが最近になり敬遠された理由も見えてきました。 日本のバターは300%を超える関税などにより、もともと超高価。バター消費量が極端に少なく、本来は風味からもバターを使いたいパン、ケーキ、クッキーなどもマーガリンで代用してきました。スーパーなどの売り場では各種のマーガリンが全盛。日本のマーガリンは欧米と異なりトランス脂肪酸が豊富。マーガリンにショートニングやサラダ、揚げ物の油を加えれば日本人のトランス脂肪酸の摂取量合計は先進国としては抜きんでてしまいます。右肩上がりの需要を予測した業者はバターを高く売るために特別な容器に入れたり、標準サイズの200グラムから多少量を増やし800円以上で販売したり。100グラムや50グラムのパッケージを新作し、200グラムに直せば目玉が飛び出るような値上げ。足元を見た関係業者の意図的な品不足さえ疑いたくなる現状。それでもバターを使いたいのが安全性に目覚めた消費者。食品加工業、流通業、外食産業も潮流の向きが変わってきているのを実感しているでしょう。 初版:2005年2月 |
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