世界の健康と食の安全ニュース
台湾、中国の地溝油(黒心油)スキャンダルと日本市場の関わり
2019/03/22
最終更新:2026-09-13
|
台湾の政財界トップクラスが主役となった頂新国際集団(Ting Hsin International Group)による地溝油(黒心油)スキャンダル。 日本の大手商社、大手食品関連企業が出資、技術などを通じて頂新国際集団に深くかかわりを持っているだけに、「日本市場の地溝油(黒心油)汚染は?」が心配されています。 食用油脂やラードは一般の人が気づかないアイスクリーム、チョコレート、パン、ケーキ類、マーガリンなどに大量に使用されていますから、汚染の有無の実態を知ることは難しく、事態は深刻です。 (前篇:2015/01/06) 「加工食品の地溝油(黒心油)汚染は底なし: 政変で暴露された台湾大手食品企業の有毒食用油」 1.偽装油脂スキャンダルの始まりは頂新系の3社民進党の躍進で暴かれた頂新グループの偽装油脂スキャンダルの中心企業はいずれも頂新グループが発祥した台湾南部の企業3社。 強冠企業(Chang Guann:高雄市大寮区)、頂新製油(彰化県永靖郷)、正義公司(Cheng I Food:高雄市仁武区) いずれも頂新グループといえる企業群であり、この3社で台湾産食用油脂のほとんどを占めます。 偽装された3社の不良有毒油脂で作られた加工食品の総計は判明しているだけで26万トン以上。 それゆえ取締りが強化された後は国産ラードが品不足。 関税を半分の10%に下げて緊急輸入をしているそうです。 (参考) 頂新グループ以外に衛生福利部食品薬物管理署に摘発された会社に北海油脂股?有限公司(台南縣仁德?保安工業區)があります。 北海とネーミングされていますが台南の会社。 豚など動物性の食用油、油脂を生産と販売していたといわれますが詳細は不明。 またアイスクリーム、パンなど一部の食用油脂は工業用油脂からスタートした南僑化学工業の食品部門が供給していますが不正の有無と供給量は不明。 いずれにせよ結論を言えば台湾製の加工食品と中国で販売される台湾企業の加工食品は当分食べることが出来ないということです。2.強冠企業(Chang Guann:高雄市大寮区)強冠企業(Chang Guann)は頂新国際集団が主導して1988年に設立したマーガリン、ショートニングなどの食用加工油脂の製造・販売を主業とする大手企業。 強冠は島南東部の屏東市(へいとう)、高雄市などで廃油処理業者から大量の再生油脂を仕入れていました。 強冠油脂が販売した油脂のブランド名は「全統香豚油」 判明している近年生産の不良再生油脂だけでも800トンになるといわれます。 著名な大口ユーザーには前篇で既出の味全食品工業のほか奇美食品(Chimei Frozen Food:1971年創業)があります。 奇美食品はファミリーマート(伊藤忠商事系)、セブンイレブンなどが販売する中華まんじゅう、餃子などの冷凍食品を製造していますがそれらに強冠企業の油脂を使用していました。 日本のコンビニが販売する中華まんじゅう、餃子が奇美食品からの輸入品かどうかは現時点では不明。 アジア市場で食品を柱にしているといわれる大手商社の伊藤忠商事が頂新国際集団を高く評価していただけに、すそ野の拡がりが相当大きいと推測できます。実態解明はこれからでしょう。 奇美食品は三菱樹脂が提携しているアクリル樹脂最大手奇美実業(Chimei Corporation:1960年創業)の子会社 日本企業との関連が不明な大手ユーザーにはベーカリー系大手コーヒー販売チェーン85度C(ケーキ、パンに使用)。 味丹企業股?有限公司(vedan:台中市):(調味料、飲料、加工食品に使用)。 日本統治時代の最大企業、台湾製糖(三井物産系)の流れを汲む大企業の台湾糖業公司(Taisugar:台南市)など、これまで明らかになっただけでも加工食品会社や飲食業者235社が挙げられています。3.強冠企業と月島食品工業強冠企業には日本の月島食品工業(東京都江戸川区:創業1948年)が約26%出資して緊密な関係(技術供与等?)があります。 月島食品は最近の売り上げが313億円といわれる中企業ですが東京・神戸・筑波に工場を持ちマーガリン、ショートニングなどの食用加工油脂を製造。 会社情報では油脂利用食品、牛乳などを主要原料とする食品の製造・販売チョコレートおよびチョコレート関連製品、冷凍パイ生地の販売。 (アイスクリーム、チョコレート用の食用油脂ではシェアーナンバーワンいわれますが未確認) 月島が販売している食用加工油脂の輸入比率は不明。 強冠企業には三井物産関係も約10%を出資(2000年)しています。4.頂新製油(彰化県永靖郷)と正義公司(高雄市仁武区)頂新国際集団の魏ファミリーは事業のスタートがひまし油などの植物性食用油。 食用油関連事業は頂新国際集団のルーツといえます。 大陸でインスタントラーメンに成功後90年代後半に台湾に凱旋した魏ファミリーは味全買収をベースに加工食品製造販売に乗り出します。 加工食品生産の重要素材である食用ラードと植物性油脂市場制覇のためそれまでの頂新製油に加え正義公司(高雄市仁武区:2005年買収)を傘下に。 頂新製油と正義公司は同体といえる存在となりました。 正義公司買収後、ただちに魏ファミリーは数億円を超える特別な脱臭用輸入機械を設置。 これにより廃油や工業用油脂、飼料油を原料に安価な食用油脂、ラードを製造。 この分野では独占と言える台湾のナンバーワン企業になりました。 数字はいまだ確認中ですが当局(食品薬物管理署)の中間発表によれば偽装油生産の総計は約2,000トン、使用された加工食品は326種がこれまでに判明しているようです(2014年10月現在)。 正義公司は当初から違法な廃油再生油脂を製造する意図があったといわれ社長(董事長)など関係者が逮捕され刑事告発されています。 (最近2年間で頂新製油のヴェトナム、香港からの廃油などの輸入総量は3,000トンを超えるといわれます。 ヴェトナム、香港では官憲を巻き込んで不正な輸出手続きをしていたとの噂もありますが真偽不明)5.正義公司と不二製油正義公司には日本の食用油脂ではトップクラスの不二製油(大阪府泉佐野市:創業1950年)が40%強を投資。 頂新国際集団の魏ファミリーと並んでオーナーと言える存在です。 不二製油は中国大陸などアジアの食品市場で手広く活動する伊藤忠系の1部上場企業。売上は食用油脂では日本最大手の2,300億円規模。 チョコレート、アイスクリームをはじめ、製パン、ケーキ用素材に特色があります。 台湾で製造された食用油脂を日本でどの程度使用しているかは不明。 (参考) 食用油脂では石鹸用など工業用油脂からスタートした一部上場企業にミヨシ油脂(東京:創業1921年)があり、食用はラード、マーガリン素材などに特色があります。 不二製油とは比較にならない500億円弱の総売り上げですが幸か不幸か中国などアジアへの進出実績はかって天津に設立した1社(南僑化学工業股。有限公司との合弁:その後解消)を除きほとんどありません。 南僑化学工業にも食用油脂部門での工業用油脂転用疑惑がありますがいまだ調査中のようで真偽は不明。6.大陸進出に台湾企業と手を組んだ日本企業日本企業が台湾に進出した目的は時代によって異なります。 当初は安い原料調達と労働力を求めての生産拠点。 次は熟してきた台湾市場への販売拠点。 最新(20-30年くらい以前から)が中国大陸進出を目的とするパートナー。 言語と異文化の壁を乗り越えるには日本語、中国語の双方をこなし近代化が進んでいた台湾が最良のパートナーでした。 台湾が販売先や生産拠点としての魅力が薄れた後も、台湾の数十倍のマーケットであり、諸物価が安かった中国大陸進出は企業にとって魅力的でした。 また近代化が遅れている中華人民共和国(大陸)側にも台湾企業や台湾経由の日本企業の助けが無ければ経済的な発展、近代化が遅延するという実情がありました。。 鄧小平が進めた開国経済政策を加速させるには、断交している台湾との経済交流が欠かせなかったのです。 日本人からみれば台湾、韓国、中国など発展途上国の中では台湾が一番早くから経済的発展を遂げており、モラルも高い国。 ところが、ここ数年で暴露されてきた様々な政治経済事件を振り返れば、やはり中華民国(台湾)は蒋介石、蒋経国、長老の中国人(外省人)が永らく支配していた未熟な途上国。 その後も外省人が政経の中枢を占めており、中国大陸への経済的進出にも外省人が活躍しています。 (1950年前後に内乱を避けて中国から蒋介石国民党と共に来島した人々が外省人)7.康師傅公司と「サッポロ一番」のサンヨー食品サンヨー食品が頂新グループのインスタントラーメン製造会社康師傅控股有限公司(Kang Shi Fu)と技術、資本の提携をしたのは1999年といわれています。 提携日程の詳細は不明ですが、頂新が中国に頂益食品を設立してインスタントラーメン製造開始が1991年。 頂益食品を康師傅公司と名称変更して上場したのが1996年(香港市場)。 中国即席麺市場占有率40%前後となる最大のメーカーとなり台湾に凱旋したのが90年代中ごろですから、急拡大によって金融面で問題があり、サンヨー食品の投資を受け入れたのかもしれません。 この投資によりサンヨー食品は魏ファミリーと並ぶ大株主(33%)となりました。 インスタントラーメン市場はカップラーメンを発明した日清が品質、味覚で他を圧するブランド品としてリード。 マルちゃんブランドの東洋水産が優れたチャネル販売で追従する形。 突出する上位2メーカーが合計7,000億円以上を売り上げ、寡占状態です。 サンヨー、明星(日清グループ入り)の3,4位は合計でも1,300億円に満たないといわれますから逆転の業容拡大をめざし外資提携、海外市場開拓に無理するのは仕方なかったのかもしれません。 成功可否の判定は10年以上の時を要します。 未確定な時期に中堅企業の実例を安易に紹介し、日本企業の大陸進出を煽るエコノミストやライターが多い時代。 サンヨー食品の大陸進出は一流経済紙までが取り上げるほどのサクセスストーリーでした。8.トップクラスの日本企業はチャイナフリーが合言葉第二次世界大戦後アジア諸国の実情に最も詳しかったのは米国。 朝鮮戦争、ヴェトナム戦争などを通じて中国、ロシアなどの軍事的脅威対策上もアジア情報入手は必須でした。 米国財界はCIA、銀行をはじめ、米国に居住する多数の中国人から適格な情報を直接収集していましたからアジア諸国への経済的進出が最も早い国でした。 それに較べ直接情報、裏情報の入手が苦手な日本は焦るばかり。 ほとんどの情報源は総合商社でしたから限界があります。 輸入買い付けにもトラブルが絶えませんが、輸出、企業進出に関しては不良中国人に騙されることがより多く、長期的な成功例は多くありません。 トップクラスの日本企業は慎重で、頼りの総合商社も財閥系はチャイナフリー。 食品など軽工業の中小業者が大陸進出へ自己責任で判断できるほどの情報が少ないのが実情です。9.日本の多くの企業が中国人に騙されている。古くから日本の中華街では一部の華僑1世による「中国人は信用ならない」 「中国人とは商売をするな」という子孫への言い伝えがありました。 どの中国人も信用ならないわけではありませんが、有識者の中国人が倫理観が欠如した同胞のあまりの多さに当惑していることを表しています。 そのような中国人とパートナーになり多額の投資や技術供与をすることはエコノミストや、マーケッティングを業としている人たちが机上で考えるほど容易ではありません。 頂新グループの勢いを信じて手を組んだ(組もうとした)日本企業は海外企業や市場の負の情報に不慣れな地方企業が中心。 日本市場の飽和感や行きづまりからラーメン、飲料、ポテトチップス、ハム、製パン、お煎餅など、次々という表現が適切なほどの多数だったようです。 海外進出は小さなヒットを重ねるべきで、逆転ホームランを狙うには中国大陸市場は危険すぎるマーケット。 インスタントラーメンに例をとれば日本第2位の東洋水産はメキシコ市場で大成功。 「マルちゃん」という言葉ががラーメンばかりでなく即席の代名詞になっているほどです。 またヴェトナムでは1993年に進出したエースコック(株)が市場占有60%近い成功を収めています。 エースコックは日本ではランキング5番くらいの売り上げ規模ですが400億円近いヴェトナムでの売り上げを合計すれば連結で約7-800億円となります. 首都圏ではなじみが薄いブランドですが関西中心に知名度が高い企業。 ただし、マルちゃんのメキシコと異なり、ヴェトナムは中国の影響が強い民族。 台湾の問題企業は地溝油をヴェトナムからも仕入れていましたから、使用油脂のルーツを説明した方が良いでしょう。10.ブラックな部分が多い急膨張中国系企業2014年12月に明らかになった頂新グループによる廃油偽装スキャンダルは2013年に中国河南省の太用食品グループ(上海福喜食品:鶴壁市)がマクドナルドやKFC(ケンタッキー)などに大量の病死鶏、期限切れ食肉などを納入していた事件に類似しています。 急膨張した大用グループと廃油事件の頂新グループの共通点は野心ある地方の貧しい零細業者が不正、偽装で蓄財しながら事業規模を広げていくというパターン。 屋台や街の外食屋に販売する程度のローカル市場にとどまっていれば表面化しない偽装も、販売規模が大きくなるとともに影響が広範囲になり被害が深刻になります。 大用グループは零細な養鶏業者がスタート。 抗生物質や成長ホルモン剤漬けの鶏肉、人間の神経を侵す「有機塩素」含有の餌で育てた家禽、病死鶏などを偽装を重ねながら販売して大養鶏業者となった成りあがり。 サクセスストーリーの主人公になるような急膨張企業はブラックな部分が多いことを再認識させています。 サクセスストーリーを煽情的に伝えるマスコミも多く、免疫力の低い日本の地方企業が単純に信じてしまう事案も後を絶ちません。 問題食品企業のほとんどがHASCUP, ISO 9001番号を並べ、社是には食の安全性への努力を記載していますが、空しいというか、呆れるというか、驚くような内容が並んでいます。 (強冠企業の社是の1部:Honesty::Honesty is the fundamental business)11.ローコスト油脂問題はアジアで発生しやすい過酸化、トランス脂肪酸に関する認識が低いアジア地域は低品質油脂を販売しやすい背景があります。 アジアでは植物性油脂があらゆるといっても過言でないほど多くの加工食品、調理食品に使用されますから、避けて通るのは至難。 特にバター、ショートニング、牛肉など飽和脂肪酸が欧米に較べ極端に高価なために、不安定で、過酸化脂質、トランス脂肪酸化しやすい不飽和脂肪酸が主の植物性油やマーガリン、油脂を日常的に代替摂取しています。 この食習慣にチョコレート、ケーキ、インスタントラーメン、中華まんじゅう、餃子など加工食品を通して質の悪い油脂が加われば摂食総量は跳ね上がり健康被害は甚大となります。 加工食品に表示される「植物性食用油」「植物性油脂」とは (注) 著者は台湾で合弁会社を設立.製造工場を25年間経営。 台湾、中国大陸との輸出入取引に40年間の経験があるマーケッティングの専門家. 初版:2015/03/02改訂版:2019/03/22 |
(2).jpg)
.png)
.jpg)
.jpg)
