世界の健康と食の安全ニュース
リノール酸を過剰摂取する米国民:
米国厚生省ラムスデン博士が細胞炎症の危険性を警告
2014/11/07
最終更新:2026-09-13
![]() 貧しい国、地域ほど低品質食用油の使用量が多いといわれ、糖尿病、肥満の急増が社会問題化. 販売されている食用油の種類と量の多さは日本をはるかに上回ります. (スーパーマーケットの食用油:タイランドの地方都市) 1.マンモス化した加工食品製造業が健康被害を拡大する昨年来、リノール酸過剰摂食の危険性を説き話題となった二人の博士は米国厚生省のクリストファー・ラムスデン博士(Christopher Ramsden, MD)と旧石器時代ダイエットとも呼ばれるパレオ・ダイエットを推進するローレン・ゴーダイン博士(Dr. Loren Cordain)。 その接点は飽和脂肪酸の良さを見出し、不飽和脂肪酸過剰には害あることの共通認識です。 肥満、認知症、糖尿病が急増する現代に最も必要といえる認識でしょう。 大量生産、コストダウンのために化学合成によって作られた食材、調味料、添加物があふれている食品加工産業。 現代の工業化食品に頼る食生活から、つぎつぎに明らかにされていく健康被害。 サプリメントでさえ大量生産品の大部分が化学合成物質となってしまう現実。 世界の食品産業がマンモス化してしまった現代ではこの流れに歯止めをかけることは至難。 現状では消費者が加工食品の内容表示明文化を要求するのが精一杯。 危ない化学合成食品は不買によって消費者自身が防御する以外に規制する手立てはほとんどありません。2.欧米人は飽和脂肪酸摂取の抑制が必要欧米では永いあいだ心臓病予防のために「バター、牛肉など動物性脂肪(飽和脂肪酸)の摂食を控えて植物性油脂(不飽和脂肪酸:polyunsaturated fatty acids :PUFAs)に切り替えること」が提唱されてきました。 アメリカはバターの価格が日本の3分の1くらい。 パンやケーキはバター使用が圧倒的に多く、飽和脂肪酸が過剰になります。 実際に医薬品投与のケースでは、悪玉コレステロール値を低下させるスタチンの効果で24%は死亡率が下がるという米国での報告があります。 (26トライアルで170,000人対象の調査)。 米国人の多くが平均的日本人の5倍ともいわれる飽和脂肪酸摂取量。 これでは過剰な飽和脂肪酸の摂取が健康を害することは明白。 *(バターの関税が300%を超え、パンやケーキにマーガリンを使用する日本人は飽和脂肪酸摂取が不足しているのが実情。 日本人が摂取する不飽和脂肪酸のマーガリン、マヨネーズや食用油はトランス脂肪酸入りが大部分.米国とは異なった健康被害が問題となっています)3.ラムスデン博士が指摘するオメガ6過剰摂食の危険性ところが米国人の食生活で飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に切り替える人のほとんどが摂食するのはオメガ6のリノール酸主体の食用油。 オメガ6のリノール酸(linoleic acid :LA)と言えば大豆、トウモロコシなどを原料とした大規模生産の安価な植物性食用油の主要成分。 花粉症など炎症の元凶となる悪玉アラキドン酸(arachidonic acid :AA)を産出します。 リノール酸と悪玉アラキドン酸は免疫組織や神経組織での代謝が妨げられることにより炎症を起こします。炎症は万病の元。 数年前からリノール酸の危険性を論理的に解説しているのがアメリカ厚生省(National Institutes of Health)のクリストファー・ラムスデン博士(Christopher Ramsden, MD.)。 アルコール依存症や生理的炎症の専門家(所属:theLaboratory of Membrane Biophysics and Biochemistryat the National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism) リノール酸は心臓血管病の原因ともなりますから、安易な植物性油脂への切り替えは動物性油脂摂取より健康に有害と博士は指摘しています。 博士の主張は不飽和脂肪酸にはいろいろな種類があり、摂食量が重要。 最も多く使用される不飽和脂肪酸は万病の元である細胞炎症の原因となるオメガ6のリノール酸。 脂質の詳細は食品ラベルに表示しなければ消費者にはわかりませんから短絡的な飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸への切り替えはかえって有害。 飽和脂肪酸抑制がリノール酸の摂取過剰につながっているとラムスデン博士は警告しています。4.ラムスデン博士のシドニー・ダイエット・ハート・スタディー検証論文ラムスデン博士が昨年の2月(2013年)にブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)に発表した論文は「Use of dietary linoleic acid for secondary prevention of coronary heart disease and death: evaluation of recovered data from the Sydney Diet Heart Study and updated meta-analysis」 「シドニー・ダイエット・ハート・スタディーの評価データ再検証における心臓血管病の2次予防または再発死にリノレイン酸(植物性オメガ3)関与の有無」 この検証論文はすでに多くのメディアに紹介されていますが、博士の持論である「いたずらに不飽和脂肪酸を増やすことが心臓血管病の予防、再発防止にはならない」ことを立証するものです。 博士の主張は不飽和脂肪酸にはいろいろな種類があり、摂食量が重要。 短絡的な不飽和脂肪酸への切り替えはかえって有害ということです。 健康な不飽和脂肪酸はオメガ3https://botanicals.co.jp/item_view.php?item_number=36 5.シドニー・ダイエット・ハート・スタディー(Sydney Diet Heart Study)とは「シドニー・ダイエット・ハート・スタディーは60年代から70年代にかけてシドニー近辺(オーストラリア)のいくつかの心臓血管病クリニックで、30才から59才の心臓疾患の既往患者458人が脂肪酸比率の切り替えで効果あったかどうかを調査したものです。 約半数近い220人に食生活における飽和脂肪酸を10%以下に抑え、不飽和脂肪酸を15%以上にするよう指導。 残りの患者の食生活は患者任せで指導なし。平均11週間後に効果の比較をしています。 このコホート(大規模調査)を約半世紀後に様々な角度で再調査、解析したのがクリストファー・ラムスデン博士(Christopher Ramsden, MD.)ら。 脂肪酸比率の変更介入グループの死亡率が指導なしグループより1.6倍から1.7倍くらい高かったことを見出しました。 一番のポイントはこれまでの指針が不飽和脂肪酸と表現しているだけでその種類に触れていないこと。 特にシドニー・ダイエット・ハート・スタディーでは供与した不飽和脂肪酸の食用油やマーガリンがリノール酸豊富な紅花油だったこと。 一般的な食生活でも肉類、バターなどの飽和脂肪酸から切り替える人のほとんどが摂食するのがオメガ6のリノール酸主体の安価な食用油。 はからずもその過剰摂食による危険性が指摘されました。 半世紀前に比べ不飽和脂肪酸のバラエティーは拡がっており、生産の工業化により健康を害する食用油、油脂が増え、トランス脂肪酸、過酸化脂質の害が加わっていることも博士らは指摘しています。6.ラムスデン博士の提言:不飽和脂肪酸表示は種類を明確化すべき。ラムスデン博士は2009年ごろよりリノール酸過剰摂食の有害性を主張し、積極的に論文を発表。 世界保健機構(WHO)や全米心臓協会(AHA)の保健ガイドラインの改定を巡って論争を起こしています。 多くの保健ガイドラインが時代により変わっていくのは当然ですが、脂肪酸に関しては現行の基準となるのが半世紀前に決められたガイドライン(飽和脂肪酸を5%‐10%に抑え、不飽和脂肪酸を15%程度に増やす)。 工業化、大量生産による食用油、油脂の変化に同調していないのが問題と、博士は指摘します。 不飽和脂肪酸には大きく分類してもオメガ3、オメガ6、オメガ9などがあり、オメガ3は動物性、植物性によってもことなりますがガイドラインにその特定はありません。 ![]() (写真左)米国で販売される安価な大豆、菜種(ほとんどが遺伝子組み換えのキャノーラ)の混合食用植物性油の成分表示ラベル. テーブルスプーン1杯分の脂肪酸14gmの成分を表示している. 健康管理に必要な飽和脂肪酸2g、トランス脂肪酸0%、コレステロール0㎎、塩分0㎎、炭水化物0㎎、タンパク質0㎎は明示. それに較べ不飽和脂肪酸は単価3gと多価9gが表示されているだけだが脂肪酸の種類はオメガ6のリノール酸がほとんど. *(写真下) 米国では圧搾機械使用製品など心臓病対策に多様な健康対策を標榜した食用油(下右)が売られていますが、下左の写真はオメガ3、オメガ6、オメガ9の健康バランスに配慮した健康油. 7.日本動脈硬化学会も「脂質の詳細を食品ラベルに表示するよう提言」欧米主要国ではすでに不飽和脂肪酸に限らず食品に含有する脂肪酸の明細をラベル表示することが義務化されていますが、遅れているのが日本。欧米の見直し論争を受けて、日本動脈硬化学会が「栄養成分のラベル表示改定提言」を2月初めに発表。 脂肪酸の種類が健康にとって重要なことを認識し、一括りになっている脂肪酸の食品表示に飽和脂肪酸、トランス脂肪酸比率など明細を記載する必要性を提言しました。8.ローレン・ゴーダイン博士のパレオ・ダイエット(Paleo diet)とラムスデン博士の飽和脂肪酸研究ラムスデン博士は不飽和脂肪酸の善悪を調査すると同時に、悪玉と思われている飽和脂肪酸の効能についても研究を進めており、量的な制約を認めるものの、その有用性を認識しています。 ここで話題となっているのがローレン・ゴーダイン博士(Dr. Loren Cordain)。 ラムスデン博士の脂肪酸研究に協力するかたわら、肉類の飽和脂肪酸、たんぱく質こそ重要な栄養素であり現代の食生活に求められるもの。 穀物類を最小にして原始的な食生活をおくることが免疫力強化、健康維持の秘訣と、世界的に話題となっている旧石器時代式ダイエット、パレオ・ダイエットを提唱しています。 彼のコンセプトはあまりに型破りなためについていけない女性も多いようですが、進歩層や学者で認める人も少なくなく、多くの有力紙( the American Journal of Clinical Nutrition,the British Journal of Nutrition, the European Journal of Clinical Nutrition,)に取り上げられ、その著書はベストセラーになっています。 ローレン・ゴーダイン博士はモルモン教徒が多く、健康産業が盛んなユタ州出身。 ユタ大学(University of Utah)で博士号取得。 コロラド州立大学教授(Colorado State University)として体脂肪の代謝、食生活によるアスリートの能力向上などの第一人者となっています。 彼が1987年ごろに出版したパレオ・ダイエット(the Paleo Diet)はベストセラーになり続編パレオ・ダイエット・クックブック(the Paleo Diet Cookbook)、パレオ・ダイエット・フォー・アスリート(the Paleo Diet for athletes)も発売されていますが、そのコンセプトは英国のデイビット・イートン博士(Dr. Boyd Eaton)の論文(New England Journal of Medicine )を読んで啓発されたものといわれています。9.パレオ・ダイエット(Paleo diet:paleolithic diet:caveman diet)とはパレオ・ダイエット(Paleo diet)のネーミングは旧石器時代の英名: paleolithic eraが由来。 したがって洞窟人間ダイエット(caveman diet)とも呼ばれています。 原始時代にもどり、穀物を最大限減らし、肉類、魚、果物、野菜、卵にナッツが主体の食生活をすべきとの主張がパレオ・ダイエット。 人類は穀物が少なく、動物性脂肪とたんぱく質が豊富な食生活をしているときは健康だったが、人工的な食品が増えて病気になりやすく不健康になった。 食生活は原点に戻るべきというのが主旨。 博士が提唱する下記のような刺激的小文がパレオの心髄でしょう。 「You can simply decide to throw a piece of meat in the oven,pan or crock-pot and then serve it with a side of your favorite roastedor steamed vegetables and a big dollop of ghee, lard or coconut oil.」 (gheeはインド式バター上澄み液) 難点は提唱される食材の高価格。 やはり誰もが選択できる食生活ではないようです。 初版:2013年3月改訂版:2014年11月 |



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