世界を魅了する食材

スパニッシュバスクのウナギ稚魚料理:
伝統食文化を守る魚のすり身

2014/08/10
最終更新:2026-09-13


フランスの至宝ビアリッツ・リゾート(Biarritz)



フランスが自他ともに世界一と認める「食と観光」を日本にレポートしているマリー・セシルさん。
2014年の夏休み一回目の家族旅行は大西洋に面したバスク地方(Basque)のビアリッツ(Biarritz)とサンセバスチャン(Sebastian:Donostia)
スペイン語、フランス語、英語、バスク語が入り乱れ、不慣れな観光客には戸惑いが多い地方ですが、観光立国を目指す国のあるべき姿をレポートしてくれました。
バスクのバールで経験したメニュー説明の入念な気配り。
個々の宗教、健康に必要な情報です。
数多いメニューですから事情の分からない観光客を誤解させない、結果的に騙す(だます)ようなことがないよう配慮されていました。
これは国際的な観光客を迎える業者の最低限のマナー。
食の偽装、詐称が当たり前のような日本人、中国人はなぜスペインが来客5,000万人を超える観光大国なのかを見習うべきでしょう。

サンセバスチャン・ビーチ(Sebastian:Donostia)
一見穏やかなビーチには名物の砂嵐が襲来します。
 1.サンセバスチャン(Sebastian:Donostia)のバールでアンギュラ探し
ビアリッツから国境を越えサンセバスチャン(San Sebastian.)へはわずか50キロくらい。
国境を越えた途端、表示はスペイン語とバスク語のみになります。(大体2重表記)
フランス側のバスク地方も、フランス語とバスク語の2重表記。
因みにマリー・セシルの住んでいるナントにはブルターニュ語と2重表記されている場所がたまにあるそうです。

スパニッシュ・バスクで食べたかったのが名物料理「ウナギ稚魚(angulas)のガーリック・オリーブオイル炒め」。
早速訪ねた旧市街。いくつものバールが軒を連らねているフェルマン・カルブトン通り(Fermin Calbeton Kalea).(Kaleaはバスクで通りを意味します)
 
20年前のスペイン各都市で、すでに高価な希少品となっていたウナギ稚魚アンギュラ( angulas)。
その後絶滅危惧種となり、一般料飲店が扱える範囲を超えていると聞いていましたが、なんとカウンターのタパスの群れに鎮座しています。
流石に本場のバスクからは消えていませんでした。
永い永い間のご無沙汰で味も忘れていましたが、とにかく美味しいー。

 
(写真上左)ウナギ稚魚、タコ、チョリソーソーセージの盛り合わせ(写真上右)タコ、アンチョビ、イカ、エビの盛り合わせバール・レストラン:ツァリューパ(Txalupa)2.ツァコリ(Txakoli)のサングリア
バールのサングリアには白ワイン使用のタイプがありました。
ツァコリ(Txakoli)はビスケーン湾岸一帯で製造されている白ワイン.
地ぶどう(Hondarrabi Zuri)の酸味を残すために未熟で収穫.
独特の若草色と若く、フルーティーなのが特徴.3.アンギュラには「GULAS」の表示と詳細説明のQRコードところが一人約1,000円を清算後に、よくよく料理の表札をみると「GULAS」
これはウナギ稚魚もどきのモック・アンギュラを意味します。
流石にカトリック王国のスペイン。
神をおそれぬ偽称、詐称で消費者をだますようなことはいたしません。
ハッキリとウナギ稚魚もどき(モック・アンギュラ:mock angulas)であることを表示しています。
表示ばかりかQRコードをスキャンすればモック・アンギュラに使用している材料の全てが各国語で.
大航海時代に続く世界の覇権争いで中南米原住民を皆殺しにしてきた極悪非道を反省しているのでしょう。
海賊たちの末裔は敬虔なカトリック信者となっています。

ピントが甘いので、拡大するとぼけていますが「山羊のチーズ、ハムの次に「GULAS」と読めます。
これがモック・アンギュラ(mock angulas)と呼ばれるウナギ稚魚もどき。
ヴィネガー和えとなっていました.

タパス・ピンチョスの表示板には日本発の光学読み取りQRコード.
バスク、キャスティリアン(Castilian:スペイン語)、フレンチ、イングリッシュの4ヵ国語で料理の内容情報を得ることが出来ます。
観光客への細やかな気遣いと先進性に驚かされました。
流石に観光大国。5,000万人が訪れる理由が垣間見えます。
豊富な観光資源を持ちながら、わずか海外観光客1,000万人誘致に四苦八苦してきた日本。
基本的な障害も多く、今のままでは目標値2.5千万人はかなりの難関です。


*タパス(tapas)とピンチョス(pintxos)はどこが違う?
当然語源が異なりますが、時を経て、いまや無国籍創作料理の時代。
相互乗り入れが激しく,、現代ではハッキリと区別することはナンセンス。
どちらでもよいと思います。
質問する外国人が多くて面倒なのか、スペインにはタパ・ピンチョスと呼ぶ人も。
ちなみにこのバールでは楊枝(ようじ)や串を使用しない、やや手の込んだ料理群をピンチョと呼んでいます。
自称グルメ達への皮肉でしょうか。4.モック・アンギュラ(mock angulas):「GULAS」とは
鱈など白身魚( Pollock fish )のすり身で作ったウナギ稚魚の代替食材.
堂々と代替品を謳う食材ですから騙しをも意味するフェイク(fake)やイミテーションという言葉は適切でないでしょう。
モックには似せて作るという意味があり、限りなく模型というに等しい言葉。
バール・レストラン:ツァリューパ(Txalupa)ではモック・アンギュラの成分を下記のように公開しています。
日本のソフトや製造機械を使用(?)しているからか「すり身」が国際的共通語。
Ingredients:
Surimi (Fish, Cephalopod, Water, Sunflower Oil, Corn Starch, Modified Starch (gluten),Flavour (contains soya), Fish Stock, Egg White, Salt, flavour enhancer (E635),stabilizer (xanthan gum), squid ink.       
モック・アンギュラ(mock angulas)は生活に根付いておりスーパーなどで素材を買うことが出来ます。
ペスカノーバ社(Pescanova)がナショナルブランドで200g600円弱.
下記は日本人向けなのか日本語入り商品ですが表示は「オリーブオイル漬けシラスウナギ」でありモックであることがわかりません。わずかに「すり身」と記してありますがシラスウナギのすり身ともとれます。
消費者の誤解を期待する不誠実さを感じます。Angulas とAnguriñasは同じ意。
5.ビアリッツ(Biarritz)はフレンチサマーリゾートの至宝
フレンチ・バスクのビアリッツは古き良き時代からの高級リゾート.
一日セレブ、にわかセレブに占領されるコートダジュールとは一線を画し静かで貴族的なたたずまいを失っていません。


 
フレンチ・バスク名物の酢漬けトウガラシ
ブラソンの鯨がかっての捕鯨基地ビアリッツ(Biarritz)を表しています。

夕暮れのビアリッツ・ビーチではライブが始まります.
音楽とお酒が欠かせない欧米のレジャー文化.
メロディーさえあれば騒音としてクレームする人はめったにいません.6.日本でウナギ稚魚を料理する?
白魚(しらうお)のガーリックオイル炒め.ウナギ稚魚と調理法は同じ日本でも半世紀くらい前にはスペイン料理屋や個人で真似て作ったウナギ稚魚のガーリックオイル炒めを経験した人が少なくありません。それも今は夢のまた夢。
完全養殖で稚魚が過剰生産となる日を待たねばならないでしょう。
ただし、日本にはガーリックオイル炒めに適した様々な食材があります。
シラスは腰が弱いためにピッザくらいにしかなりませんが、しらうお(白魚)、しろうお(素魚)と呼ばれているサケやハゼの親戚はウナギ稚魚の代替品として使えます。
キビナゴ、ワカサギもなかなかの美味.
かねてよりアンギュラが超高価なスペインではガーリックオイル炒め(al Ajo)はマッシュルームやクルマエビ、シュリンプ(Langostinos)が主流。
メニューにはLangostinos al Ajoのように記載されます.
白ワインやシェリーを加える調理法もあります。
 
(写真上)佐賀県産の素魚(しろうお):このまま踊り食いする人も.右は拡大.

(写真上)紀伊半島産のキビナゴ.(写真上右)北海道産の小さなワカサギ
シラス(カタクチイワシの稚魚)のピザは湘南の定番ガーリックオイルのベースはオリーブオイルですが、生産地から遠い日本では酸化していないオイル入手は至難.産地の味を知る人には似て非なるオイルです.
一番搾りを航空便で取り寄せない限り、酸化臭のないオリーブオイルを食することは難しいのが現状.
   
日本で魚介のグリルに最適なのは米油.
高級専門店のてんぷら、フライに使用されています.
さわやかなくせのない香りは新鮮な国産米から得られます.
詳しくはこちら
 7.タパス・ピンチョスと居酒屋レストランの時代 
オード―ブルだけでレストランのディナーを構成する人がいる時代。
日本でも家庭料理では主菜と前菜を区別しない人が珍しくない時代となりました。


宴会や様々なフォーマル・レセプションでフランス料理、日本料理のフルコースというパターンもだいぶ崩れて来ましたが、いくら趣向を変えてもやはりコース料理はコース料理。
無駄が多く、飽きがきます。
いずれは化石的なスタイルになるかもしれません。
そのような体験が多い階層ほどプライベートでは、好きなものを好きなだけ食べ、食べただけ支払うスタイルを好みます。
新聞のコラムでこれをブッフェスタイルと呼んでいる人がいましたが、ブッフェは何種類をいくら食べても料金はフィックスされて同じ。
居酒屋、寿司屋や飲茶、バールスタイルとブッフェは根本が異なります。
寿司バーに続き、居酒屋が世界のレストランスタイルの一つになる日が予感されます。

日本でもバールを模したスナックバーは珍しくありませんが、関税、酒税が高いこともあり、生ハム、ソーセージ、チーズ、酒類が欧米の数倍もする現状では、観光客が驚くほどの高料金となります。

*日本で飲茶やバールスタイルが成功しないのはあまりに酒類や料理一品の価格が高いからです。
和素材を使いこなし、コストダウンにしのぎを削る居酒屋のみが世界レベルとなれるソフトを持っています。
マリーセシルさんが取材したバールの支払いはビール、ワインなど飲み物を入れて一人1,000円位。
バールとしては高いほう。立ち飲みならばもう少し安いそうです。

(生鮮食材研究家:しらす・さぶろう)