健康と食品の解説

ノロウィルスと日本の生牡蠣
30年間世界の生産量が増えない牡蠣養殖の何故?
これであなたも生牡蠣博士第一話
アジア人の食生活に学ぶシリーズ

2025/10/25
最終更新:2026-09-14


グルメに愛され続ける美味しい牡蠣のシーズンとなりました.
ノギボタニカルでは20年以上前から健康長寿を目指すグルメの方々に世界の牡蠣生産の情報を提供しています。

美味だけでなく、強い体造りに欠かせないジンクが豊富なことで知られる健康食品の牡蠣ですが、先進諸国での消費量は永年、伸び悩んでいます.
誰もが美味しいという世界の牡蠣生産が30年間も増えない理由は?
温暖化により予期せぬ天変地異に見舞われる生産地が増えていることもありますがそれ以上の原因と指摘されているのは、インフルエンザのように変異が激しいノロウィルスの蔓延です.
「牡蠣で食中毒を経験した」方が身近にいないことは稀でしょうが、その原因がノロウィルスと断定されたのは比較的最近です。
「ノロウィルスが牡蠣食中毒の主原因と解明された経緯」
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=869
 築地の場外市場各所では、暑い時期に関わらず、若いアジア人観光客達が店頭で生牡蠣一個(約800円)を立食しています.
日本民族と異なる免疫を持つ民族なのか、未経験のために危険性を感じないのか分かりませんが、おそらく後者でしょう.
築地場外市場の風物詩かもしれませんが、日本民族は真似をしないよう、お勧めします.


岩手県のマガキ.3.11大震災の打撃から立ち直りつつあります。
温暖化で漁獲量が減少していることもあり、大震災後の養殖業者は5年で半減していると言われますが生牡蠣なら宮城県を中心に三陸産といわれる美味なマガキ.
同じ産地、同じ海域のマガキも生育状態が異なり、形状が様々になります.

海岸に迫る緑と荒海から湾内への強い水流.牡蠣は豊饒な海で清浄に育ちます.



1.日本の牡蠣生産量日本の1998年の生産量は38000トン(むき身)、殻付きは約20万トンと言われますが、あくまで推量。
最近は漸減傾向が続いています。
新型コロナ禍の激減期を除いても、2022年の生産量は新型コロナ前の2019年より、やや減少しています。
2011年の東北大震災で種牡蠣を全国に供給する宮城県の牡蠣産業が壊滅的被害を受けたこともあり、今後も楽観は許せません。

養殖生産量の約半分18,000~20000トン(むき身)前後を広島県が占めますが岡山、兵庫近海を加えると瀬戸内海産が圧倒的過半数。
その他の主要産地は第二位の宮城県が5,000トン(むき身)前後。
岩手県、三重県(的矢牡蠣)が続きますが、いずれも生産量は横ばい。
東北産は生食牡蠣の味覚と安全性に定評がありますが。2011年以降は震災の影響で10分の1くらいに激減。
現在はやや持ち直していますが、まだまだです。
こだわりの美味しい牡蠣が広まれば牡蠣食人気が復活するかもしれません。

生牡蠣食の参考記事「ブラフオイスターと東南アジアの生牡蠣:これであなたも生牡蠣博士第五話:」
http://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=228
 「北アメリカ太平洋岸とメキシコ・ガルフの生牡蠣:これであなたも生牡蠣博士第四話:」
http://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=231
 
「北アメリカ大西洋岸の生牡蠣:これであなたも生牡蠣博士第三話」
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=229
 「フランスの生牡蠣市場を盛り上げる日本のマガキ:これであなたも生牡蠣博士第二話:」
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=225
 
2.生牡蠣産業の将来と慢性アレルギー患者が絶えない問題点.最も生牡蠣に近い、安全でおいしい料理法は*蒸し牡蠣牡蠣産業はマニアックともいえる愛好グルメが世界中に多い割に、この30年間成長していません。
地球温暖化による天変地異や養殖海面の汚染による寄生虫、ヘルペスの蔓延により各国の生産量が低下。
供給が細り、価格が高騰していることが最大原因と指摘されていますが、真の実態はボディーブローのように効いている微生物感染症やアレルギー発症者の増加と言われるようになりました。

新たな摂食者が現れれば、アレルギー、微生物感染症発生患者がそれを帳消しにする。
一旦感染症を発症すればアレルギー症状が慢性となり、2度と食すことが出来なくなるのが特徴的です
プラス・マイナスゼロ状態が30年間も続いている最大の理由であり、この問題を解決しなければ、世界の牡蠣産業は発展しないといえるでしょう。


1個の牡蠣には3万個の微生物が取り付いているといわれ、その種類もノロウィルス(後述)、A型肝炎、腸炎ビブリオ菌、赤潮のプランクトン毒など多様ですが微生物による感染性胃腸炎症状が発生すると、それからは食するごとに、頭痛、痙攣、発疹、嘔吐、下痢、呼吸困難など原因不明のアレルギー症状が出るようになり、アナフィラキシー・ショックを含めて再度の摂食が困難といわれます。
また、それが母子遺伝するのではないかとも喧伝されています。
事故発生により、生牡蠣ばかりでなく牡蠣加工食品まで摂食できなくなる人が漸増し、牡蠣愛好者は増えるどころか、漸減しているのではと懸念されています。

汚染海域での養殖、モラルの低い関係業者、外国産などの偽装輸入品混入、産地直売の無殺菌生牡蠣などを排除し、安全性確保に全力をあげることが解決策ですが、まずはアレルギー未発症者を大事にし、原因病原菌やウィルスの感染を未然に防ぐことでしょう。

陸上で微生物の少ない海水を使用してカキ養殖を試みる業者もいるようですが、コストが高く。
販売価格が3~5倍にはなるようですから一般への普及には時間がかかるでしょう。
また、養殖では自然界の餌(エサ)が味を決める最大要素を満たせないと言われます。
海岸に迫る緑と荒海から湾内への強い水流.牡蠣は豊饒な海で清浄に育ちますから現段階では陸上養殖では美味しい牡蠣が期待出来ません。

ノギボタニカルでは、皆さまがグリコーゲンはじめ天然ジンクとVB12がとびぬけて豊富な健康食材を安全に楽しく、末永く食せるように、また、内外のシーフードレストラン、オイスターバーで楽しく注文できることを期待して安全情報を集めています。
加熱不足が多いカキフライや焼き牡蠣、牡蠣の美味しさが損なわれるソテーより、生牡蠣に近い味覚を楽しめる最も安全でおいしい料理法としては*蒸し牡蠣をお薦めしています。
(生牡蠣を食する習慣の無い中国沿岸部各地や台湾ではごく小さな天然牡蠣を爆炒調理で食していましたが、進化が激しい都会部では天然牡蠣を使用しているとは限りませんから、要注意)3.生牡蠣ならば東北産の消毒済みパック詰めがお薦め東北の養殖海域には生食牡蠣出荷禁止海域がほとんどありません。
殺菌後の出荷に早くから取り組み、消費者まで人手を経ないで届く、東北地方の消毒済みパック詰め生牡蠣は、産業汚染の少ない海域で生産され、「むき身」や「他人が開いた殻付き牡蠣」「紫外線無照射の殻付き牡蠣」に較べ安全度が高いといえます.
生食愛好者の唯一の選択肢、ともいえるノロウィルスやA型肝炎対策といってよいでしょう.

パック詰めは翌々日までを賞味期限としていますが、加工日の翌日までを限度として、最終日(三日目)に食するのは避けたほうが良いでしょう.
加工日を意図的に記載せずに、翌々日のみを賞味期限として記載する業者のパックはお薦めできません。
東北産の清浄度が評価されているために、西日本の生産者が岩手産、宮城産の剥き牡蠣を仕入れてパック詰めし、表示を宮城産、岩手産とするケースが複数ありますが、要注意。
産地証明書があるわけでは無いことと、剥き牡蠣は微生物混入が容易になるからです。
4.世界の養殖牡蠣の主要品種と推測生産量牡蠣は分類学上、軟体動物門 (Mollusc)、二枚貝網 (Bivalvia)、イタボガキ科 (Ostreidae)に属します。
イタボガキ科には3属あります。

*オストレア(Ostrea)属,*クラッソストレア(Crassostrea)属,*ピクノドンタ(Pycnodonta)属.


日本各地の海岸には様々な形状の牡蠣殻が打ち上げられます。
テトラポットや防波堤にはムール貝と共に天然の牡蠣も付着しますが可食部分はほとんどありません。(神奈川県藤沢市江の島海岸)

牡蠣は世界に100種類以上あるといわれますが、食用として重要な品種は10種類もないといわれています。それもほとんどは天然。
養殖は圧倒的にマガキ(Crassostrea gigas)が多く、その他の数種類は米国のイースタン(Crassostrea verginica)を除くと生産量がわずかです。
牡蠣の豊富な種類を売り物にするレストランなどでは、同じ品種であっても産地名を付け異品種として勘定しています。
養殖牡蠣は収穫年によって、同じ品種でも産地とその海域(潮流、塩分濃度、水深、海藻など)、養殖方法、サイズ、収穫年によって異なる味覚を楽しむことが出来るからです。

中国:は世界最大の生産国で、殻付き牡蠣を年間約500万トンを生産していわれるといわれますが、自家消費がほとんどですから数字は定かではありません。国際統計からが除外しています。
韓国:が約30万トン、アメリカが 約16万トン、フランス:はノルマンディー地方が主で、約10万トン、オーストラリア:が約9万トン、いずれも殻付き牡蠣の推測量です。5.日本発のマガキ種以外の食用牡蠣品種クラッソストレア属(Crassostrea):米国西海岸で養殖されているバージニア種クラッソストレア属(Crassostrea):オーストラリアのロック・オイスター(養殖は少量)。
オストレア属(Ostrea):米国西海岸で復活しつつあるオリンピア種オストレア属(Ostrea):フランスのブロン(米:ベロン)などオストレア属(Ostrea):ニュージーランド、チリのブラフ・オイスター(養殖は微量)。

世界の大半を占める日本の養殖牡蠣品種日本ではフラットなオストレア属(Ostrea)の生産が少なく、大きな市場に出回るのはクラッソストレア属(Crassostrea)のマガキ、イワガキがほとんど。
天然がほとんどだったイワガキも最近は養殖が増えています。

日本産の牡蠣は6種類ありますが、マガキ以外はごくわずかです.
*クラッソストレア・ギガ(Crassostrea giga)(マガキ)
*クラッソストレア・ニッポナ(Crassostrea nippona)(イワガキ)
*クラッソストレア・アリアケンシス(Crassostrea ariakensis)
(別名クラッソストレア・ヴィヴラリス C. vivularis)(スミノエガキ)有明湾の通称ヒラガキ.セッカ*クラッソストレア・シカメア(Crassostrea sikamea)(シカメガキ)
*クラッソストレア・エキナータ(Crassostrea echinata)(ケガキ)
*オストレア・デンセラメラーサ(Ostrea denseramellasa)(イタボガキ)
生産地、収穫年により、同じ品種でも形態、成長速度、グリコーゲン、ジンク含有量等に違いがあります。
また牡蠣は亜種、雑種が出来やすいとも言われています。

 


秋田県男鹿半島の天然イワガキ(Crassostrea nippona)

天然貝は殻にヒレシャコガイのような多重のヒレ(fin)があります。
3年を過ぎた貝の大きさは養殖物Mサイズの3倍以上。(秋田県戸賀湾)

茨城県産イワガキ(Crassostrea nippona)6.日本の養殖牡蠣産業の将来日本近海に約20-25種類が生息するといわれますが、養殖されているのは、ほとんどがマガキ(クラッソストレア・ギガ:Crassostrea gigas)。
マガキは外国で通称ジャパニーズ・オイスター((Japanese oyster)、またはパシフィック・オイスター(Pacific oyster)といわれる種類。
日本では古くから様々な地域で生産されていますが、東北地方を除けば生食は産地で殻付きを食するに限ります。

      歴史の古い三重県鳥羽の的矢生牡蠣.

その他で成果が出てきたのがマガキ同様のクラッソストレア・ギガ:Crassostrea gigas)属のイワガキ養殖(Crassostrea nippona)。
養殖場所によって味が大きく異なりますが、割烹や居酒屋には天然に比べて安価なために、多くの養殖イワガキ愛好者がいます。
価格を安くするために比較的小さいサイズで出荷されていますが、本来のイワガキのセールスポイントは身肉の大きさでした。
ただし、内臓が大きい身肉に必ずしも愛好家が多いとは限りません。
先進国の欧米ではマガキでも小型が好まれる傾向がありますから、評価はこれから。

九州有明湾が中心のマイナーなスミノエガキ、シカメガキ(マガキと同じとの説も)も養殖業者が減っており、絶滅危惧種指定の天然物が産地の「かき(牡蠣)小屋」で出される程度。

スミノエガキは米国東海岸のチェサピークで日本からの導入検討があり、かなり期待されたようですが、最終的に没になりました。
現地には経過のレポートがありますが、理由は今一つはっきりしません。

世界に食用出来る天然牡蠣、養殖品種はいろいろありますが、200年を経て主要品種が絞られたのにはわけがあります。
スミノエガキ、シカメガキ、イタボガキは日本では永い養殖の歴史を持っていますが、メジャーになれなかったのには、歩留まりなど生産性にそれなりの理由があったからです。
広島、宮城など古くからの産地では業者数が減少しているようです。

生食牡蠣はまず安全性。加えて生産コストが安く、美味しいことが最優先条件。
ローカルなマーケッティング上の差別化のためにマイナーな天然牡蠣が観光地の「かき小屋」で販売されることが多いようですが、焼牡蠣はともかく生食牡蠣は安全性が担保されません。
「牧場からそのままの牛乳」とPRして未消毒(ノン・パストライズ)のミルクを直売する危険性に通じます。

国土が狭い日本では産地ごとの味の違いに無関心なようですが、米国ではクマモトといわれる生食牡蠣が人気です。
クマモトをシカメガキと決め付ける人が米国にもいるようですが、差別化のためのPR情報といわれます。
独自の学名を持つシカメガキそのものが、マガキないしはその亜種という説があります。
半世紀以上前にはシカメガキが輸出されたこともあるかもしれませんが、現在の美味しくコストの安いクマモトはマガキの延長線上という説が大勢です。

日本でもオストレア属のベロン(ブロン)の養殖を小規模に試みた人がありました。
宮城県気仙沼湾の唐桑町舞根地区の(有)水山養殖場(畠山重篤代表)ですが(2004年現在)、2011年の大震災で打撃を受けました。
畠山重篤さんは2025年4月に亡くなられましたが養殖場は息子さんが継続しています。
ブロンの再生産は不明ですがブロンは美味しい牡蠣として著名。
養殖は困難が伴うようですが、フランスでは寄生虫害前までメジャーな牡蠣でした 

  
島根、京都、新潟、秋田など日本海沿岸地域と太平洋の三陸、茨城が名産だった天然イワガキ。
近年は各地でイワガキ養殖に成功.単価が高く、有望な品種として市場の成長株.
写真は熊本県天草近海産の養殖イワガキ(Crassostrea nippona).

7.佐藤忠勇氏による生牡蠣滅菌法の発明佐藤忠勇氏(1887年~1984年)によって1925年に志摩半島の的矢湾に設立された佐藤養殖場が開発した、「オゾン・紫外線併用殺菌海水装置」は生食牡蠣を出荷するのには必須の設備となっています。
この装置は、紫外線による殺菌灯を海水に1分間照らして無菌状態にして、その海水をパイプで送り込み、シャワー状に牡蠣に降り注ぐシステム。
汚水は水槽の底から流れ出るようにして、再び牡蠣が汚水を取り込まないように工夫してあります。
この中で牡蠣を数日間飼育すると、体内にあったものが全て排出され、20時間で細菌や内臓の汚れをすべて吐き出します(佐藤養殖場の情報)。
殺菌された牡蠣はグリコーゲンなどが減少するといわれ、加熱する牡蠣は殺菌しないほうが美味しいと言われています。

(生鮮食材研究家:しらす・さぶろう)
初版:2004年3月改訂版:2022年11月改訂版:2023/11/03